2004 Fiscal Year Annual Research Report
B中間子からタウ粒子への稀崩壊過程を用いた新しい物理の探索
Project/Area Number |
02J04283
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松本 崇博 東京都立大学, 学術振興会特別研究員
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Keywords | B中間子崩壊 / Bファクトリー実験 / B中間子全再構成タグ |
Research Abstract |
本研究の主目的は、B中間子からタウ粒子への崩壊過程を用いて新しい物理を探索することである。目的とする崩壊過程には終状態に複数のニュートリノが存在する。このような崩壊過程の観測は、通常の手法を用いた場合困難とされていた。このため、本研究では、Belle実験において生成されるB中間子対のうち、片方を全再構成タグする手法を開発した。この手法により、反跳側のB中間子の運動量、及び、フレーバーを知ることができる。即ちオフラインにおけるB中間子ビームを得ることができる。この究極の手法を用いることで、B中間子崩壊をより詳しく研究することができるとともに、ニュートリノを終状態に含む崩壊過程もバックグラウンドを飛躍的に抑制することで観測される可能性が高まることが期待される。B中間子の全再構成においては、2体崩壊B→D^<(*)>(π,ρ,a_1,D_s^<(*)>)を用い、選択条件を最適化することで検出効率を高めた。最終的に、250fb^<-1>のデータを用いて、B^+で0.3%、B^0で0.2%の検出効率を得ることに成功した。全再構成Bタグ事象は66万事象に及び、この高統計事象を用いて、小林・益川行列要素|V_<cb>|、|V_<ub>|の精密測定、B→τνの探索などが可能となった。B→τν崩壊に関しては、現在で一番厳しい崩壊分岐比の上限値3.9 x 10^<-4>を測定し、荷電ヒッグス粒子に対する制限tanβ/M(H^+)<0.33 GeV^<-1>を与えることができた。この荷電ヒッグス粒子は将来的にはB→D^<(*)>τν崩壊過程を用いてより詳しく研究することができる。現在の統計量では観測は困難であるが、次期のスーパーBファクトリー計画においてこの崩壊過程が観測できる可能性があることがわかった。また、本過程観測の準備研究として、類似過程であるB→D^<(*)>πlν崩壊の研究を行い、Bファクトリー実験において初めて観測することに成功した。
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