2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J04285
|
Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
幸田 章宏 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 強相関電子系 / μSR法 |
Research Abstract |
1.スピンアイス化合物Dy_2Ti_2O_7において最近、見出された磁場中カゴメアイス状態についてカナダTRIUMF研究所(以下、TRIUMF)で縦磁場μSR実験による研究を行った。その結果、カゴメアイス状態では磁気モーメントのゆらぎが非常に発達していることが分かった。このことは、2次元カゴメ格子面内における磁気フラストレーションに由来するものと考えられ、現在、ミュオン静止サイトの同定、および磁気構造等の定量的な解析が進行中である。 2.パイロクロア格子を有する酸化物超伝導体KOs_2O_6,RbOs_2O_6およびLiTi_2O_4のμSR測定をTRIUMF、高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)において実施した。KOs_2O_6では磁場中の磁束格子状態にともなうミュオンスピン緩和を観測し、異方的な超伝導状態が実現しているという結論に至った。またLiTi_2O_4においても同様な測定を行い、やはり磁場中で準粒子励起の増大している様子が観測された。しかしこの物質では比熱等他の測定によって等方的な超伝導ギャップの存在が指摘されており、我々の結果はさらに小さなエネルギーのギャップをともなった多重ギャップである可能性を示唆していると考えられる。 3.2.の関連物質としてパイロクロア格子を有するCd_2Os_2O_7のμSR測定をKEKにおいて行った。この物質は約230K付近で金属-絶縁体転移を示すことが他の測定などから報告されているが、絶縁体に転移した後の状態については、例えばNMR測定では信号が消失してしまうため、よく分かっていなかった。我々の測定の結果、230Kで絶縁体転移した直後では磁気フラストレーショーンに起因すると思われる非常に速い磁気ゆらぎをともなった状態であり、さらに低温にすることでSDW的な磁気転移の出現が明らかとなった。 4.S=2のハルデンギャップ物質である可能性が指摘されているFe^<2+>イオンを含んだジャメソナイト化合物FePb_4Sb_6S_<14>のμSR測定をTRIUMFで行った。これまでハルデンギャップ状態の検証は主にS=1の磁性体で行われており、S=2でハルデンギャップ状態がどうなっているかについては、あまり詳しく調べられていなかった。今回の測定の結果、低温では端のスピン自由度に由来すると思われるスピングラス的な磁気転移を観測し、さらに磁気転移温度以下でもミュオンスピンの緩和が見られない非磁性状態の領域が試料体積比でおよそ30%存在することが明らかとなった。これは試料中に240格子長程度の1次元鎖が形成されているとすると矛盾なく解釈でき、すなわちこの物質がS=2ハルデンギャップ状態のモデル物質である可能性を支持する結果となった。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] A.Koda, R.Kadono, W.Higemoto, K.Ohishi, H.Ueda, S.Kondo, 他: "Spin fluxtuation in LiV_2O_4 studied by muon spin relaxation"Physical Review B. 69. 012402 (2004)
-
[Publications] R.Kadono, K.Ohishi, A.Koda, W.Higemoto, K.M.Kojima, 他: "Magnetic ground state of Pr_<0.89>LaCe_<0.11>CuO_<4+α+δ>"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2955 (2003)
-
[Publications] R.Kadonoo, W.Higemoto, A.Koda, M.I.Larkin, G.M.Like, 他: "Large vortex core at low magnetic induction in La_<2-x>Sr_xCuO_4 probed by muon spin rotation"Physica C. 388-389. 631 (2003)
-
[Publications] K.Ohishi, K.Kakuta, J.Akimitsu, A.Koda, W.Higemoto, R.Kadono, 他: "Excess quasiparticle outside the vortex cores in Y(Ni_<1-x>Pt_x)_2B_2C"Physica C. 388-389. 197 (2003)
-
[Publications] W.Higemoto, K.Satoh, A.Koda, K.Nishiyama, K.Shimomura, 他: "μSR study of CeRh_2Si_2 under a high pressure"Physica B. 329-333. 601 (2003)