2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J04285
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
幸田 章宏 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強相関電子系 / μSR法 |
Research Abstract |
1.パイロクロア格子を有する酸化物超伝導体RbOs_2O_6およびCsOs_2O_6の強い横磁場下でのμSR測定をカナダTRIUMF研究所(以下、TRIUMF)でおこなった。それぞれの超伝導体において、磁束格子状態の形成にともなうミュオンスピン緩和率の増大を確認した。また異方的超伝導状態の可能性を検証するために磁場進入長の磁場依存性の測定をおこなった。RbOs_2O_6においては磁場によって磁場進入長が増大する様子が観測され、準粒子励起の増大を示唆する結果が得られた。しかしながら測定温度が約0,5T_cと比較的高温であったため、熱による準粒子励起の可能性も排除しきれず、超伝導秩序変数の異方性についてはさらに低温における検証が必要である。一方、CsOs_2O_6においては他のKOs_2O_6,RbOs_2O_6と比較して超伝導状態でのミュオンスピン緩和率が小さく、また磁場印加にともなって、この緩和率の値はさらに急激に小さくなっていくことが明らかとなった。解析によって、この急激な変化は上部臨界磁場が従来報告されている値よりもかなり小さいと仮定すれば、磁場に依存しない磁場侵入長として解釈できることが示された。つまりCsOs_2O_6は異方性の非常に小さな従来型の超伝導である可能性が考えられる。この点についてμSR測定自体により上部臨界磁場を決めることが重要であると考え、今後も引き続いて測定をおこなう。 2.昨年度実験をおこなったスピネル酸化物超伝導体LiTi_2O_4の、今回はさらに過剰Liドープ試料について強い横磁場下でのμSR測定をTRIUMFでおこなった。Li_<1.1>Ti_<1.9>O_4の試料ではLiを過剰ドープしない試料と同様な超伝導転移にともなうミュオンスピン緩和率の増大を観測した。しかしLi_<1.2>Ti_<1.8>O_4およびLi_<1.3>Ti_<1.7>O_4の試料ではバルクな超伝導転移を示唆する緩和率の変化は観測されず、従来のマクロ測定の報告内容を支持する結果であった。ただし超伝導が観測されない試料では低温になるにつれ徐々に緩和率が上昇して恥く傾向が観測されており、これは磁気モーメントの臨界緩和に関連した現象と考えられる。この系の超伝導と磁性との関連を明らかにする上で重要な新たな発見であると考えている。 3.重い電子的な特異な基底状態を持つスピネル酸化物LiV_2O_4について、最近、単結晶の合成に物性研グループが成功し、その単結晶を用いたμSR測定をおこなった。我々が従来、多結晶試料の測定において指摘してきた相分離状態が単結晶試料でも観測され、試料の質の不均一さによるものではなく、相分離状態がこの系の本質的な現象であることが示された。
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Research Products
(5 results)