2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J04331
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松村 寛之 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代史 / 思想史 / 十五年戦争 |
Research Abstract |
平成15年度の私の研究実績の概要は、次のとおりである。 (1)私の研究課題である「15年戦争期における国民意識の諸相」については、まず、研究対象時期の日本社会における思想的特質と、その特徴的なあらわれについての検討をおこなった。その結果、15年戦争期の国民意識において顕著にあらわれたと見られる精神状況の淵源は、日清・日露戦争期から明治40年代にかけての時期にまでさかのぼることで規定され、その特質は、特に石川啄木が批判する「性急な思想」の隆盛にすでに示されていることが明らかとなった。次に、この思想的な特質は、1920年代における資本主義の進展と、大衆社会化の進展を背景として強まり、15年戦争期になると、それは革新運動や西洋近代の超克をめざす思想的な営為としてはっきりと示されることを解明した。そのなかでも、多くの文学者や思想家によって喧伝された、いわゆる<日本へ回帰>に関する問題は、単純な保守的反動ではなく、明治維新以来の日本近代の文化的・思想的歩みが行きつかねばならなかったアポリアの意味の問い直しにかかわっている。さらに、15年戦争期における日本人の思想的課題は、それに対する十分な取り組みを欠いたまま、敗戦後の社会に引き継がれていった、という見通しを得ることができた。これらの研究結果については、さらに検討を重ねていきたい。 (2)平成15年6月におこなわれた大阪歴史学会の近代史部会において、「古川隆久氏の昭和戦時期研究に関して」と題する報告を行い、その内容が『ヒストリア』第188号(2004年1月)に掲載された。
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Research Products
(1 results)