2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J04344
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 高弘 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 知覚 / 志向性 / 現象的質 / クオリア / 意識 / 心の哲学 |
Research Abstract |
知覚における現象的質の本性や役割を解明するには、伝統的な第一性質と第二性質の区別を見直すことが重要な手がかりになるという予想の下で、ロックの古典的議論を省みつつ、クオリアなどをめぐる現代の問題関心にとってその区別が持つ意義を積極的に評価し、その研究成果を科学基礎論学会で発表した。具体的には、その区別のポイントが何であるかを明らかにし、さらにその区別がなぜ存在するのか考えることによって、クオリアの存在意義が見えてくるということを論じた。また、その第一・第二性質の区別の本質からのひとつの帰結として、われわれは何を直接見ているのかという直接的実在論の問題について、われわれは物理的事物の多くを直接見てはいないということがいえるということを論文にしてまとめた。その論文は学会誌『科学哲学』への掲載が決定している。さらにまた、クオリアに関する一つの有力な見解になっている現象的外在主義と呼ばれるものについて、批判的に検討し、その成果を日本科学哲学会において発表した。具体的には、DretskeやTyeなどの代表的な現象的外在主義者の議論を取り上げ、その議論のはらむ問題を詳細に論じた。現象的外在主義は、経験の透明性を尊重する点において、クオリアに関する他の哲学的見解よりも優れていると考えられるが、クオリアを単純に客観化し、クオリアに特有の主観性が捉え切れていないきらいがある。そして、そのクオリアに特有の主観性は、第二性質の持つ主観性に通ずるものである。そのことが、Dretskeらの議論を検討することによって明らかになった。
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Research Products
(1 results)