2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J04344
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 高弘 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 知覚 / 志向性 / クオリア / 表象 / 第一・第二性質 / 表象説 |
Research Abstract |
実体、性質、ディスポジションといった基本的な存在論的カテゴリーに関する哲学的問題が近年活発に議論されているが、その議論は知覚にまつわる問題についても含意するところが多い。とりわけ、事物の知覚可能なさまざまな性質を第一(primary)と第二(secondary)に分類する伝統的な二分法について、性質とディスポジションに関する最近の形而上学的議論を踏まえながち改めで見直すことは、そもそも何かが知覚可能であるとはどういうことかといった根本的な問題に対する新たな洞察をもたらすに違いない。そのような問題意識に基づいて、伝統的な第一・第二性質の区別の存在論的身分について検討を試みた。すなわち、一つの有力な見解によると、その区別は存在論的に重要な区別を反映するものではなく、伝統的に第二と見なされる性質(色など)は第一に吸収されてしまうが、しかし、伝統的に第一と見なされる形や大きさなどの時空的性質だけでは事物の知覚可能な性質を構成することができない。事物が知覚可能であるためには、知覚主体の側のディスポジションと協調して力を発揮する第二性質のような本質的にディスポジジョナルな性質が存在しなければならない。そのようなことを京都科学哲学コロキアムの例会にて発表し、その発表内容をまとめた論文を学会誌に投稿した。 次に、知覚経験に伴う現象的側面(クオリア)に関する問題について、クオリアを自然化する試みとして有力視されている表象説と呼ばれる立場を批判的に検討することによって、そもそも経験を表象として捉えることが妥当であるのかについて反省を試みた。その結論は要するに、表象説の基本的な論点(クオリアは表象内容にスーパーヴィーンする)が正しい限り、表象としての経験の存在論的身分を根本的に見直す必要があるということであるが、そのことを日本科学哲学会にて発表し、その発表内容をまとめた論文を学会誌に投稿した。
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Research Products
(1 results)