2002 Fiscal Year Annual Research Report
初代培養細胞に発現しているトランスフォーメーション抑制遺伝子の包括的単離機能解析
Project/Area Number |
02J04391
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 直寿 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / トランスフォーメーション / 初代培養細胞 |
Research Abstract |
成体の正常細胞に近いと考えられるヒトやラットの初代培養細胞には、トランスフォーメーション抑制遺伝子が存在することを我々は以前細胞融合実験より示してきた。この抑制遺伝子は、成体での癌発生の抑制にも関与していると考えられ、この分子が何であるのか同定することは、in vitroでの癌抑制機構を解明するだけでなく、成体での癌発生機構の解明にも繋がっていくものである。申請者は、cDNAサブトラクション法により、71種類の候補遺伝子(TRIFと命名)を単離した。単離してきた遺伝子のうち、TRIF52/periostin、新規低分子量G蛋白質TRIF97の機能解析を行い次のことを明らかにした。 1)Periostinと癌の発生機構との関連を調べるため、がん細胞株および癌組織におけるPeriostin mRNAの発現についてノーザンブロット法、RT-PCR法、in situハイブリダイゼーション法により検討した。その結果、Periostin mRNAは、正常細胞及び正常組織では、発現が認められるが、種々のがん細胞株、肺がん組織において発現量の低下及び消失が認められた。このことから、Periostinの発現量低下が、癌発生と関連している可能性があることが分かった。現在、Periostinのペプチド抗体を作製し、癌組織でのPeriostinタンパク質の発現の有無について検討を行っている。 2)Periostinの発現量が低下、あるいは消失しているがん細胞株にPeriostin遺伝子を再導入したところ、がん細胞株の足場非依存性増殖の抑制が認められた。また、この抑制には、Periostinタンパク質のC末端側が関与していることが分かった。C末端側は、Periostinファミリータンパク質間で保存されていない部位であり、Periostinタンパク質特異的な領域であった。さらに、Periostinは分泌タンパク質であるが、細胞質にとどまっているPeriostinが癌化抑制に関与していることが分かった。 (3)新規低分子量G蛋白質TRIF97は、Rasと相同性が高かったことから、この遺伝子の活性型、不活性型のポイントミュータントを作製した。これらをマウス及びラット不死化細胞に導入したが、Rasと異なり、細胞がん化活性については認められなかった。また、野生型、活性型及び不活性型の細胞内局在について検討したところ、どのミュータントも野生型と同様にすべて細胞質に局在することが分かった。今後、低分子量Gタンパク質としての機能、また、細胞がん化との関連についてさらに検討していく。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yoshioka N. et al.: "Suppression of anchorage-independent growth of human cancer cell lines by the TRIF52/Periostin/OSF-2 gene"Experimental Cell Research. 279. 91-99 (2002)
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[Publications] Qi, B.et al.: "Pro-apoptotic ASY/Nogo-B protein associates with ASYIP"Journal of Cellular Physiology. (In press). (2003)