2002 Fiscal Year Annual Research Report
豚伝染性胃腸炎ウイルス感染防御への組織指向性偽ウイルス粒子の応用
Project/Area Number |
02J04393
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 一哉 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 豚伝染性胃腸炎ウイルス / バキュロウイルス / S蛋白 / 組織指向性 |
Research Abstract |
豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)は感染個体に激しい下痢を引き起こし、哺乳豚がその感染を受けた場合100%近い致死率を示すため、畜産業界では重要な病原体の一つとして認識されている。しかし現在までTGEV感染に対して充分な免疫防御効果を発揮出来るワクチンは開発されていない。本研究では外来遺伝子の高発現系として広く用いられているバキュロウイルス発現系を用いてTGEVのビリオン様粒子を作製し、その小腸上皮指向性を利用して感染防御に重要な局所免疫を成立させることを目標とし、本年度は以下の実験を行った。TGEVのエンビロープ蛋白の主要構成成分の一つであるS蛋白は組織指向性決定に重要である。そこでTGEV野外分離株からRT-PCR法により、S蛋白をコードするcDNAクローンを得て、塩基配列を決定した。このクローンから任意の制限酵素処理によって、S遺伝子の全長ORFを切り出し、昆虫細胞発現ベクターにサブクローニングし、pIB/TGEVSを得た。pIB/TGEVSを昆虫細胞にトランスフェクトし、目的蛋白の発現を哺乳動物細胞由来のものと比較することで確認した。また、pIB/TGEVSを昆虫細胞にトランスフェクトし、薬剤選択により、S蛋白を安定して発現する昆虫細胞を得た後、これにリポーター遺伝子を持つバキュロウイルスを重感染させることで、エンビロープにTGEVのS蛋白を取り込んだ偽バキュロウイルスを作出、この偽バキュロウイルスのブタ細胞に対する結合能・感染能を検討する事により、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系によって発現させたS蛋白が本来の組織指向性を保持しているかの確認を試みた。今後、TGEVのビリオン構成必須蛋白であるM蛋白・E蛋白のクローニング、昆虫細胞での発現における各機能保持の確認を行いながら、これら発現蛋白によるTGEVのビリオン様粒子形成の至適条件の検討を行っていく予定である。
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