2002 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀国際社会における森林保護論の展開-グローバルな環境保護主義形成のプロセス
Project/Area Number |
02J04454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 祥子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大戦間期 / 森林保護 / 環境保護主義 / インド / 乾燥化 |
Research Abstract |
大戦間期、International Union of Forest Research Organizationsによって開催された国際森林会議の議事録等を分析することによって、森林保護に関する情報や研究結果を交換し、共有する国際的な体制がつくられる過程を明らかにした。また、国際会議における議論から、国際的な環境保護主義の成立に植民地の環境保護主義が及ぼしたインパクトについても検証できたと考える。 大戦間期の国際社会における植民地の地位を考えると、その貢献は比較的限られていたと想定されるかもしれないが、植民地、特にインドの森林管理官は、国際林学の発展に積極的に関与し、一定の発言力を持っていた。第一次大戦後、インドの森林管理官は、イギリス帝国林学の主要な構成員という地位を使って国際会議に参加し、影響を及ぼすことができた。かれらは、乾燥化理論の解明の必要性を国際的に注目すべき問題と繰り返し主張した。というのも、乾燥化問題を特定の地域特有の症状とは受け取らず、長期的には世界中のどこでも起こりうる「普遍的な」問題ととらえており、地球上の各地で森林が枯渇し、乾燥化に苦しむ地域が増えれば、やがては人類の滅亡につながるかもしれないという強い危機感をもっていたからである。こうした主張が、コンサベーションのための育林技術の向上という方向へ流れていこうとする国際林学の展開に対し、森林が気候や環境の安定化に及ぼす影響力にも目を向けさせるのに役立ったと思われる。
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Research Products
(1 results)