2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的改変細胞を用いた細胞性粘菌多細胞体の運動における構成単細胞の運動性の解析
Project/Area Number |
02J04483
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三浦 耕太 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞運動 / 環境応答 / 動画像処理 / 細胞間シグナリング / 形態形成 / 走光性 |
Research Abstract |
細胞性粘菌の多細胞期の移動体は光に向かって移動運動を行う。移動体運動を制御しているのは細胞間cAMPシグナリングによって協調した移動体内の細胞の運動である。移動体内を三次元的に動く細胞の運動と、移動体全体の走光性運動を関連づけるために、三次元的な細胞の移動運動の解析を行う必要がある。このために光学流動を数値的に測定し、結果する速度ベクトル場を解析する手段は細胞性粘菌の多細胞期に応用されている。私は昨年度に二次元蛍光動画像の測定の定量性評価、及び三次元動画像の速度ベクトル場測定アルゴリズムの考案・開発を行った。移動体内で他の細胞とは違った運動を行う一部の細胞が、走光性における移動体の方向転換、即ち先端部分の屈曲に関わっていることがこれまでに示唆されている。移動体は分化した幾種かの細胞から構成されており、移動体の運動方向転換=形態変化のかぎとなる細胞はこれらの細胞のうちの一種類である可能性がある。細胞種に特異的な運動を検討するため、今年度は(1)三次元速度ベクトル場法の開発を更に進め、全体的に協調した方向・速度で移動する細胞群の中で、特殊な運動を行う細胞の動きを検知するアルゴリズムを考じた。(2)抗原抗体法を用いた分化細胞の特異的なラベリングを発展させ、蛍光顕微鏡法において最適な蛍光特性をもち、退色がほぼ皆無であるQdot(量子ドット)を使用する手段の開発を始めた。(3)分化細胞の特殊な運動における細胞間cAMPシグナリングの活性変化の関与を調べるため、遺伝子導入によるcAMPレセプターの強制発現・阻害の影響を検討し、(4)細胞分化のかぎであるPKA、プロテオソームの阻害剤による低強度の阻害を行った。これまでのところ(3,4)の処理を移動体に行う上でいくつかの困難な点が見出され、方法の再検討が必要である。(5)三次元動画像の取得は画像デコンボルーション法にのみ依存していたが、赤外領域で使用可能なニポウ式共焦点顕微鏡が開発されたため、その試用を開始した。このことで三次元的な細胞運動をより精細な蛍光画像として取得することが可能になり、三次元速度ベクトル場測定の精度の向上が見込まれる。
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Research Products
(1 results)