2002 Fiscal Year Annual Research Report
超解像位相差電子顕微鏡法による原子レベルDNAゲノム解析
Project/Area Number |
02J04515
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川崎 忠寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNA / 位相差電子顕微鏡法 / 3次元フーリエフィルタリング法 / 透過型電子顕微鏡 / 原子レベル分解能 / 位相像再生 / 3次元フーリエ解析 / スルー・フォーカス像 |
Research Abstract |
DNAの分子構造は、X線回折からその構造が知られているが、原子レベルの構造解析は未だなされていない。そのような高分解能解析には、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察が非常に有効であるが、従来のTEMの結像系は理想的なものではなく、収差(特に球面収差)が残存していること、焦点を合わせると位相像が観察できないことなどが問題であった。特に、DNAのような生体分子は位相像でなければ観察することができないため、これまでは十分な分解能が発揮されていなかった。そこで本研究では、フォーカスの異なる複数枚画像を用いることで位相像が再構成できる3次元フーリエフィルタリング法という超解像位相差電子顕微鏡法を確立し、それを応用して、DNAの原子レベル観察を試みている。本年度に行なった研究の概要を以下にまとめる。 (1)3次元フーリエフィルタリング法の最適化 本手法では、3次元フーリエスペクトルに対して乗算されるフィルタ関数が処理像に大きく影響する。そこで、このフィルタ関数の形状を最適化し、ノイズや偽解像が極小化される条件を決定した。 (2)3次元フーリエフィルタリング法の原子位置再現性の定量評価 本手法によって得られる位相像は、試料が薄ければ原子位置を正確に再現することが可能である。その精度は、試料の厚さが増すほど劣化するが、DNAを観察する場合であれば、ピコ・メートルの精度で原子の位置情報が得られることをシミュレーションによって明らかにした。 (3)DNA試料のTEM観察用支持膜の作製 DNAのように軽元素が主成分の場合、像コントラストがわずかなために、支持膜のコントラストが重なるとその解析は極めて困難になる。そこで、蒸着金グリッドという新しい生体分子用支持膜を開発し、DNA分子の支持を行なった。この支持膜は、厚さ数ナノ・メートルの金の薄膜で、孔径〜10ナノ・メートルの孔が多数あけてある。この孔部に架橋されたDNAには支持膜のコントラストは重畳されないため、精度の高い観察、解析が可能となる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Kawasaki, Y.Takai: "Phase Reconstruction with Simulataneous Correction of Spherical and Astigmatic Aberrations by Three-Dimensional Fourier Filtering Method"Surface and Interface Analysis. Vol.35 No.1. 51-54 (2003)
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[Publications] T.Ohtomo, T.kawasaki, Y.Takai: "Atomic Level Characterization of Ultrathin Flat Cobalt Disilicide Film with Three Crystalline Domains"Journal of Applied Physics. Vol.91 No.12. 9663-9666 (2002)
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[Publications] T.Kawasaki, Y.Takai: "Principles of Phase Reconstruction with Aberration Correction using Three-dimensional Fourier Filtering Method"Porc. of Microscopy and Microanalysis 2002. Vol.1. 474-475 (2002)
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[Publications] T.Kawasaki, Y.Takai: "Quantitative Analysis of Phase Image Reconstructed by Three-dimensional Fourier Filtering Method"Proc. of 15th International Congress on Electron Microscopy. Vol.3. 435-436 (2002)
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[Publications] 高井義造, 川崎忠寛: "3次元フーリエフィルタリング法による金微粒子の球面収差補正位相像"まてりあ. Vol.41. 886-887 (2002)