2003 Fiscal Year Annual Research Report
「周辺」共同体からメキシコ農地改革の歴史記述を再考する
Project/Area Number |
02J04571
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 雅彦 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | メキシコ / 文化人類学 / 農地改革 / 歴史叙述 |
Research Abstract |
今年度は、まず昨年度メキシコで調査・収集した一次資料の整理と分析をおこなった。 そして、今年度はじめに提出した計画通り、分析途上で明らかになったことを、申請者が以前からおこなっていた調査結果と組み合わせることで、ひとつの論文にまとめ、日本ラテンアメリカ学会の学会誌である『ラテンアメリカ研究年報』に投稿した。 「メキシコ農地改革における一村落の指導をめぐる語り:ミチョアカン州ティリンダロの『ドン・セベロ』」と題した論文は、査読の最終審査を通過し、来年度(2004年6月頃)に発刊される『ラテンアメリカ研究年報』24号に掲載される予定である。 この論文は、文書史料によって確認できる歴史、現地の人によって語られた歴史(彼らの記憶)、そしてナショナルなレベルで流通している言説、この三つの農地改革史をめぐる解釈の関係を視野に入れ、現在までの申請者の研究成果を素描したものである。 従来、文化人類学的なフィールド・ワーク(インタビュー)という手法を使い現地調査をおこなっていた申請者は、科学研究費補助金によって昨年度に実施したメキシコの文書館における文書史料の調査・分析によって、これまでおこなってきた自らの研究に新たな側面を加えることができた。さらに、この論文では、従来の研究が「村」を一枚岩的に捉えていたために、あまり注目されてこなかった「村内部の分裂」の様子を、村人の語りだけではなく、文書によっても確認できることを示した。これもまた、科学研究費による補助を受けた文書史料調査によって明らかになったことである。 申請者は、上記論文を、研究課題の最終目標である「農地改革の歴史の新しい可能性を叙述する」ための一段階として位置づけている。 来年度は、今年度の研究成果を発展させ、さらに詳細な民族誌を完成させる。
|
Research Products
(1 results)