2002 Fiscal Year Annual Research Report
MLMについての歴史的・比較文化的研究-アムウェイを中心に-
Project/Area Number |
02J04728
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木島 由晶 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MLM / アムウェイ / 販売員 / 社会学 |
Research Abstract |
東京、大阪、広島にある日本アムウェイの販売員グループ(総数11)で参与観察をおこない、それらの組織形態について調査した結果、以下のような成果が得られた。 1.一般に、MLMは「ピラミッド販売」などと呼ばれる。販売員は口コミで愛用者を増やし、それにより販売員のグループが連鎖的に形成されるという特徴を持つ。グループ内にはピン・レベルと呼ばれる武道の段位制にも似た階級があり、活動実績に基づいたいくつものランクが設定されている。こうしたピン・レベルは文字通り販売員のグループ内での地位を示す役割を果たし、上位者はアムウェイから多額のボーナスを受け取ると同時に、他の販売員から尊敬を勝ちとることになるが、しかしながら、そこには上下関係を前提とした権限のシステムはみられず、その点で「官僚型の企業組織」とは大きく異なっている。 2.販売員のグループは、成員間の情緒的紐帯の強さと、成員の営利志向とにおいて、2つのタイプに大別することができる。1つは、成員間の情緒的な紐帯が強く、成員の営利志向が弱いタイプであり、仕事を通じて自己の成長を求める販売員で形成される傾向にある。もう1つは、成員間の情緒的な紐帯が弱く,成員の営利志向が強いタイプであり、経済的なインセンティブを重視する販売員で形成される傾向にある。前者は「擬似共同体」、後者は「自発的結杜」に近い特徴を有している。 MLMは1970年代以降急速に世界中に広まりはじめるが、以上のような特徴を有する販売員(グループ)がこの期を境に増えはじめた理由としては、「後期近代」以後の個人化の進展が一因と考えられる。
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