2003 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性なスピロ化合物の特性を利用する新規不斉反応の開発
Project/Area Number |
02J04795
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
篠原 俊夫 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピロ / イソオキサゾリン / 配位子 / 触媒的不斉合成 / アミノカルボニル化反応 / パラジウム / 一酸化炭素 / β-アミノ酸誘導体 |
Research Abstract |
当研究室で開発した剛直なスピロ骨格に二つのイソオキサゾリンを有するスピロ型ビスイソオキサゾリン配位子(SPRIXs)とパラジウムトリフルオロ酢酸から調整した触媒を用いる触媒的不斉アミノカルボニル化反応についてさらなる検討を行った。基質としてアルケニルトシルアミドを選択し、一酸化炭素雰囲気下、室温で反応を行ったところ、反応はわずか3時間半で終了し、対応する環状β-アミノ酸誘導体を80%収率、31%不斉収率にて得た。SPRIXsを添加しない場合では24時間後でも生成物の収率が22%であることから、SPRIXsが本反応において顕著な配位子加速効果を示すことが明らかになった。さらに検討した結果、スルホニル基にメシチレンを有するアルケニルスルホニルァミドを基質として用い-20℃で反応を行った場合、対応する環状β-アミノ酸誘導体を95%収率、60%不斉収率にて与えることが分かった.また、基質としてアルケニルウレアを用いた場合、窒素原子を二つ含む二環式化合物をほぼ定量的に54%不斉収率にて与え、ヒドロキシアミン誘導体を基質として用いた場合、対応する光学活性イソオキサゾリジンを71%収率、38%不斉収率にて与えた。これは触媒的不斉アミノカルボニル化反応の初めての成功例である。興味深いことに、既存の配位子では本反応を加速するものは見つかっておらず、SPRIXsの特性を十分に示すものである。Pd(II)SPRIXs触媒による触媒的不斉アミノカルボニル化反応により生理活性物質として興味深い環状β-アミノ酸誘導体やアルカロイド関連化合物を光学活性体として効率に供給できるものと期待される。 また、このようなSPRIXsの特異な機能を解明するために、スピロ骨格を持たないビスイソオキサゾリン配位子やビナフチル骨格を有するビスイソオキサゾリン配位子を合成し、同様の骨格を有する既存のビスオキサゾリン配位子との反応性の比較検討を行った。その結果、アルケニルアルコールの触媒的不斉Wacker型環化反応やアルケニルトシルアミドの触媒的不斉アミノカルボニル化反応においてイソオキサゾリン配位子のみが特異な反応加速効果を示すことが明らかとなり、イソオキサゾリンの配位官能基としての特徴を見出すことができた。また、それら反応においてスピロ骨格が不斉発現に有効であることも見出した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Muthiah, C., Arai, M.A., Shinohara, T., Arai, T., Sasai, H.: "Catalytic asymmetric synthesis of α-Methylene-γ-butyrolactones using chiral Pd(II)-SPRIX catalyst"Tetrahedron Letters. 44. 5201-5204 (2003)
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[Publications] Wakita, K., Arai, M.A., Kato, T., Shinohara, T., Sasai, H.: "Spiro bis(isoxazole) as a new chiral ligand"Heterocycles. 62. 831-838 (2004)
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[Publications] 荒井緑, 篠原俊夫, 荒井孝義, 笹井宏明: "スピロビスイソオキサゾリン配位子(SPRIXs)の創製と触媒的不斉合成への応用"有機合成化学協会誌. 62. 59-69 (2004)