2002 Fiscal Year Annual Research Report
ミオシン1分子の変位の軌道とF-アクチンの構造変化の同時測定
Project/Area Number |
02J04835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西川 宗 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミオシン / アクチンフィラメント / 1分子操作技術 / レーザートラップ / 回転 / モーター / 軌道 |
Research Abstract |
これまで、(1)ミオシンVおよびミオシンVIが1分子でF-アクチン上を移動するモーターであること(2)これらミオシンの動作原理が、一般に受け入れられている歩行モデルでは説明不可能なこと(3)レールであるF-アクチンが運動メカニズムに能動的に関与することを報告した(Nishikawa, S. et al. BBRC 2002)。本研究の目的は、F-アクチンの機能を考慮にいれて新しいモデルを提示する,ために「ミオシン分子がF-アクチンのらせん構造のどの部分を移動するのか」、「これに伴うF-アクチン内部の構造が時間的・空間的にどのように変化するか」の二点を明らかにすることである。 今年度の研究の成果は、上記目的の前半部分に関するものである。第一に、これまで開発した「F-アクチンの回転変位測定用顕微鏡」に「1分子力学測定システム」を組み込み、「ミオシン1分子の運動の軌道」を直接計測する顕微鏡を開発した。開発途中に得られた基礎データを参考に系の構成を申請時予定から改変し、時間分解能とS/Nの向上を実現することができた。第二に、この軌道計測系を用いてミオシンVIの運動の軌道の実測を試みた。当初の予想どおり、同時測定という実験自体の難解さゆえ十分なデータ数は得られていないが、負荷条件を変化することで少なくとも3種類の軌道を実測することができた。この成果はミオシンの運動がミオシンの構造やF-アクチンのらせん構造の束縛により一意に決定されないことを示唆し、状況に応じて最適な軌道を選択する生体分子モーターの超高次機能を計測できたと解釈できる(2003年の米国生物物理学会にて発表予定)。 回転運動という全く新しい側面から生体分子モーターの運動機能を計測することで、従来の運動モデルに不足していた情報が多数明らかになりつつある。引き続き測定および計測系の改良を行い、今年度の成果を定量的な形にまとめ論文投稿する予定である。
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