2003 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンゲルマニウムによる歪みシリコン中のキャリア移動度向上に関する理論的解析
Project/Area Number |
02J04836
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中辻 広志 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MOSFET / ひずみシリコン / 2次元ホール / 移動度 |
Research Abstract |
本研究ではひずみSi pMOSFETにおける反転層移動度の増大機構を探るために,非局所経験的擬ポテンシャル法を用いてホールの2次元状態を詳細に調べた。計算の結果,ひずみによるホール移動度の増大には2つの要素が関係していることが分かった。まず1つは基底状態と第1励起状態の間隔がひずみによって増大する点である。これによりサブバンド間での散乱が抑制され移動度が増大する。もう1つは状態密度の減少である。これによりサブバンド間およびサブバンド内で散乱が減少し,移動度が増大すると考えられる。また本研究では移動度増大率の垂直電界依存性についても調べた。ホール移動度増大率が垂直電界に依存するのは,サブバンド間隔,およびひずみによる状態密度の減少率にあることを明らかにした。本研究では反転層ホールの移動度増大機構と電界依存生を数値計算により定性的に示すことができたが、定量的には実験結果と計算結果には未だ差が認められた。その理由の1つとして,輸送解析に用いた散乱モデルに問題があると考えられる。ひずみSiのホールの2次元状態は精度の高い計算で求めたが,散乱確率の計算では重なり積分の波数依存性を無視し、Γ点のみの波動関数を用いた。しかしながら実際には散乱後の終状態を正確に考慮した重なり積分の計算が必要である。このような近似の下で行った重なり積分の値は、近似を行わない計算値と比べてその値がひずみ印加時には小さいことが分かった。即ち散乱確率は、今回用いたモデルによる計算結果よりも大きくなり、移動度の増大が抑制される。したがって移動度増大率の実験値と計算値の差は改善される。しかしながら、我々の計算法では計算時間およびディスク容量を膨大に消費し、これらの効果を正確に取り入れた輸送解析を行うことは不可能であった。今後は、アルゴリズムの見直しによるシミュレータの効率化を図ることが必要であり、計算機のさらなる進化も必須条件である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Nakatsuji, Y.Kamakura, K.Taniguchi: "Full Band Monte Carlo Simulation of Two-Dimensional Hole Transport in Strained Si p-MOSFETs"International Workshop on Computational Electronics(アブストラクト). (2003)
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[Publications] H.Nakatsuji, Y.Kamakura, K.Taniguchi: "Full Band Monte Carlo Study for Two-Dimensional Hole Transport in Strained Si p-MOSFETs"Journal of Computational Electronics. 2. 109-112 (2003)