2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子モーターの動作原理を応用した人工ナノ機械の構築
Project/Area Number |
02J04886
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 朋信 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 分子機械 / ナノテクノロジー / 1分子操作技術 / レーザートラップ / ミオシン / アクチン / ブラウン運動 |
Research Abstract |
生体分子モーターの1つにミオシンと呼ばれる蛋白質がある。ミオシンは、ATP加水分解で生じる化学エネルギーを利用してアクチンフィラメント(以下Fアクチン)上を36nmのステップを伴いながら滑り運動する。昨年度、私は、ミオシンの運動の駆動力がブラウン運動であることを証明した。 今年度、我々は、光ピンセット法による1分子ナノ計測技術を用いてミオシン1分子がFアクチン上を運動する過程と、エバネッセント照明法による1分子可視化技術を用いてミオシン1分子の蛍光性ヌクレオチドCy3-ATP 1分子の結合・解離を、同時に計測することに成功した。ミオシンは、ATPを加水分解して得たエネルギーを利用して変位を発生し、その後ADPを放出すると考えられていたが、ATP結合、ADP解離と変位発生を同時に観測してみると、ADPが解離した後(〜1秒)にミオシンが変位発生するという結果が得られた。この結果は、ミオシンはATP加水分解で生じたエネルギーをミオシン内部に一度閉じ込めるという、ミオシンの履歴効果を示唆している。 また、ポリスチレンビーズを用いて、人工モーター蛋白質の構築の試作を行った。直径1μmのビーズに強力な電荷を持たせた荷電ビーズを作成した。荷電ビーズは、Fアクチンと結合した。この荷電ビーズがFアクチン上を運動する様子を、1分子ナノ計測法により観察した。荷電ビーズは、Fアクチン上を前後に35nmのステップを繰り返していた。この35nmという値は、Fアクチンの螺旋構造周期(36nm)とほぼ一致する。荷電ビーズには外部からエネルギーを与えていないので、荷電ビーズのステップの駆動力は、ブラウン運動であると考えられる。本研究は、モーター蛋白質のFアクチン上の1次元拡散運動を再現できたと共に、ミオシンの運動には、Fアクチンが深く関与していることを示している。この荷電ビーズを一方向に運動させるためには、ミオシンのブラウン運動から一方向性を生み出すエネルギー変換機構の解明が必須である。
|
Research Products
(1 results)