2003 Fiscal Year Annual Research Report
物体視情報処理経路における両眼視差情報と奥行き知覚の対応
Project/Area Number |
02J04904
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田辺 誠司 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経生理学 / 両眼立体視 / 両眼視差選択性 / 大脳皮質視覚野 / V4野 / ランダム・ドット・ステレオグラム / 奥行き知覚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、サル大脳皮質V4野において、両眼視差感受性細胞の両眼立体視との関わりを明らかにすることにある。本年度実施した研究によって、3匹のサルで実験を完了し、合計で115個の神経細胞からランダム・ドット・ステレオグラム刺激に対する視覚応答が得られた。これらのデータを解析した結果、以下のことが見出された: 1.V4野神経細胞のランダム・ドット・ステレオグラムの両眼視差に対する選択性 半数以上(70/115)の細胞が統計学的に有意な両眼視差選択性を示した。選択性を定量的に評価すると、V4野は初期視覚野V1よりも全体で約20%低い選択性を有していることがわかった。選択性の強い細胞のほとんどは、小さい交差視差に最大応答を示し、ゼロ視差で視差の変化にもっとも感受性が高かった。 2.左右眼像のドットの輝度を反転させて奥行き知覚が生じない条件における、V4野神経細胞の両眼視差選択性の減弱 63個の細胞で、両眼視差チューニングが、数学的に記述したガボール関数で近似できた。この関数のパラメーターを比較することで、V4細胞はV1細胞と比べて輝度反転ランダム・ドット・ステレオグラムの視差に対する選択性が約半分まで減弱した。 ヒトを含む霊長類は、ランダム・ドット・ステレオグラムの両眼視差に応じて奥行きの異なる面を知覚し、左右眼のドットの輝度を反転すると奥行き面の知覚が消滅する。これらの知覚現象と本研究の結果を比べると、奥行き知覚と強く相関した神経細胞が多数V4に存在することがわかった。両眼立体視のメカニズムは、V1で初期処理が行なわれてから、V4野を含む腹側視覚経路を通ってさらに処理され、奥行き知覚の基盤となる神経活動が生成されることが示唆された。本年度に行なった研究で、結論を導くのに十分なデータがそろい、学会発表を行ない、国際誌に掲載する論文が完成した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Seiji Tanabe: "Rejection of false-matches for binocular correspondence in macaque visual cortical area V4"The Journal of Neuroscience. (in press).
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[Publications] Seiji Tanabe: "Reduced binocular disparity selectivity of V4 neurons to anti-correlated random-dot stereograms"Journal of Vision. 3(9). 62a (2003)
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[Publications] Seiji Tanabe: "Tuning of area V4 neurons to binocular disparity embedded in correlated and anticorrelated random-dot stereograms"Abstracts for the Society of Neuroscience. 179. 18 (2003)
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[Publications] Seiji Tanabe: "Binocular disparity selectivity to anti-correlated random-dot stereograms is reduced in monkey V4"Neuroscience Research. 46(s1). 57 (2003)