2004 Fiscal Year Annual Research Report
エステルのアシル-酸素結合の触媒的切断を含む新しい変換反応
Project/Area Number |
02J05035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畳谷 嘉人 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エステル / アシル炭素-酸素結合 / 遷移金属触媒 / アシル金属中間体 / ルテニウム / パラジウム / カップリング |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いたカップリング反応の最近の発展は目覚しい。これまでは、芳香族ハロゲン化物、擬ハロゲン化物などが求電子剤として用いられていたが、新しい求電子剤の開発が盛んである。特に、カルボニル化合物、例えば酸無水物、チオエステルなどを用いた反応が多数報告され始めたが、エステルをこの種の反応に用いた例はほとんど無く、いずれの場合も電子的に活性化された基質しか用いることができない。これはエステルのアルコキシ基の脱離能が低いためである。 最近、我々は触媒に配位可能なピリジン環を持つエステルを用いることで、ルテニウム触媒によるエステルの脱カルボニル化的還元反応、有機ホウ素化合物とのカップリング反応が効率よく進行することを報告した。また、パラジウム触媒を用いれば、より温和な条件で有機ホウ素化合物とのカップリングが進行することも見出した。基質の適用範囲は広く、芳香族、脂肪族カルボン酸エステル共に用いることができる。安息香酸エステルの芳香環上に電子吸引基、供与基があっても反応に影響を与えず高収率でカップリング生成物が得られる。アリール基の導入は効率良く進行するが、アルキル基としてはベンジル基のみが導入できる。また、有機ホウ素化合物のかわりに、ヒドロシランを用いるとアルデヒドが生成することも見出した。類似の酸塩化物を用いた反応に比べ本反応の収率は高い。本反応でも基質の制限は少なく、芳香族、脂肪族アルデヒドが効率よく得られる。反応条件下、生成物は安定であり、アルデヒドは更なる還元をうけない。しかし、配位子の影響は大きく、ホスフィン配位子が無い場合、アルデヒドが更に還元された生成物のみが得られる。いずれの反応においても、sp^2窒素の触媒への配位が必須である。この手法を用いることで、エステルのアシル炭素-酸素結合が触媒的に切断され、新しいアシル金属中間体の発生法として有用であることを示した。
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Research Products
(2 results)