2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森下 博文 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経科学 / 神経発生学 / 構造生物学 / 細胞接着因子 / カドヘリン |
Research Abstract |
脳の発達に関わる分子メカニズムの解明の切り口として、神経特異的発現を示す新規カドヘリン型受容体CNRファミリーに着目している。CNR蛋白質の多様化している領域はカドヘリンモチーフを有する細胞外領域に集中していることから、その細胞外領域を通じて特異的神経回路形成過程に関わる可能性が想定された。本研究はその詳細な解明を目的として、CNR蛋白質の構造機能解析を行った。 <CNRファミリーの蛋白質立体構造の決定> 多様化したCNR蛋白質の特徴は、特にその細胞外領域に集中している。N末端細胞外領域のEC1領域はファミリー間で保存されている一方、EC23領域にはファミリー間で多様化した部分が集中している。その詳細な分子機能の解明のため、大腸菌の発現系によるEC1領域蛋白質、ならびに動物細胞発現系によるEC1-6領域の組み換え蛋白質の立体構造解析を行っている。 まずEC1領域については、X線解析のための結晶化(姫路工業大学・樋口芳樹教授との共同研究)と、NMRによる解析(大阪大学蛋白質研究所・池上貴久助教授との共同研究)を同時並行で行っている。現時点では、結晶化に関しては微結晶は得ているもののX線解析に適した結晶を得るには至っておらず、引き続き結晶化条件検討を行っている。一方、NMR解析においては、良好な3次元NMRスペクトルを得るに至り、現在すでに主鎖の決定を行っているところであり、構造決定に向けて大きな前進がみられた。 またEC1-6領域については、CNR蛋白質の多様性の意義を明らかにする上で重要であるため、新たに動物細胞による発現系を構築した。発現効率を考慮し、現在のところEC1-3,EC1-4,EC1-5,EC1-6領域それぞれについて細胞株を樹立し、蛋白質の大量発現精製系を完成させた。現在これらの蛋白質について結晶化の条件検討を行っているところである。 <CNRファミリー蛋白質の機能解析> 立体構造から得られる情報の神経回路形成における機能的意義を明らかにするためには、CNR蛋白質の機能評価系の構築、in vivoにおける蛋白質の局在の解明、相互作用分子の解明が必須である。機能評価系に関しては昨年度構築し、CNRの細胞外領域に神経細胞の軸策伸張活性が存在することを明らかにできた。本年度はまずその軸索伸長活性の作用点を明らかにするために、新たに作成された13種類のすべてのCNRを認識できる抗体を用いて免疫組織学的解析を行った。その結果、神経回路形成期に一致して一過性に主要軸索に強い発現を認め、実際にin vivoにおいて神経回路形成に関わる可能性を示唆できた。また、CNRが作用する相手となる相互作用蛋白質を明らかにするために、CNR細胞外領域にAlkaline Phosphataseもしくは抗体のFc領域を融合した蛋白質プローブを作成し、現在脳組織、細胞に対して結合実験を行っている。今後はこの結合活性を指標に発現クローニングを行い、CNRの相互作用分子を同定する予定である。
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