2002 Fiscal Year Annual Research Report
粒界相制御による電子伝導性を付与した高強度セラミック基複合体の創製
Project/Area Number |
02J05073
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金 允護 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 窒化ケイ素 / 粒界相 / イオン伝導性 / 多機能調和型材料 / パルス通電焼結法 |
Research Abstract |
窒化ケイ素セラミックスは、室温から高温まで優れた機械的特性を示すことから高温構造材料として最も期待されている。しかしながら、窒化ケイ素はそもそも絶縁体であり、加えて焼結が難しく、焼結には助剤添加による粒界ガラス相の形成が不可欠である。このような窒化ケイ素に従来の方法で電気伝導性を付与するには、助剤の他に大量の伝導性第二相が必要となり、そのため強度などの特性が低下する。そこで本研究ではこの粒界相に電気伝導性を有し、かつ、焼結助剤にもなりうるガラス系を導入すれば、わずかな添加量で窒化ケイ素中に3次元的な導電パスのネットワークを形成でき、機械的特性も維持できると考えた。なお、その導電パスをより緻密なネットワークとするために、一般的な焼結法より昇温や冷却時間を短くできるパルス通電焼結法を用いた。また、導電性焼結助剤としてはLi^+、Na^+、K^+、Ca^<2+>を含むシリカ系ガラス(Li_2O-Si_2O-Al_2O_3)を用いた。 その結果Li^+、Na^+、K^+、Ca^<2+>を含んだ窒化ケイ素の作製に成功した。電気伝導度の測定結果からは、Li^+及びNa^+添加窒化ケイ素の電気伝導度は一般的なAl_2O_3-Y_2O_3助剤窒化ケイ素に比べて非常に高い値(4桁以上向上)を持つことが確認された。なお、Li^+およびNa^+イオン伝導性窒化ケイ素では、β相が約30%生成しているが、K^+またはCa^<2+>イオン伝導性窒化ケイ素では、β相の生成量は10%程度であった。このβ相の生成とも関係して、Li^+およびNa^+イオンを粒界に導入した焼結体の強度は、K^+およびCa^<2+>イオン伝導性窒化ケイ素より高強度で、1.4GPa以上と優れた機械的特性を示すことが分かった。以上の結果から、Li^+およびNa^+イオンを粒界に導入したイオン伝導性窒化ケイ素は、高い伝導性と優れた機械的特性の両方を兼ね備えた多機能調和型材料であると言える。
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