2004 Fiscal Year Annual Research Report
味覚学習における情動喚起性の研究-「獲得等価性・差異性」の現象を中心に-
Project/Area Number |
02J05176
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
澤 幸祐 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 獲得等価性 / 食塩欠乏処置 / 連合可能性 / 情動 / 表象 |
Research Abstract |
食塩欠乏処置を行うことによって,ラットなどでは塩味刺激が喚起する情動は,ショ糖溶液などが生得的に喚起するのと同様に快の情動へと変化する.本研究では,食塩欠乏処置による塩味刺激が喚起する快の情動がショ糖溶液のものと同様であることを利用し,情動表象を共通結果事象とした獲得等価性の形成が可能であるかを検討した.獲得等価性は,異なる二つの刺激に対して,共通する結果事象を対提示することによって二つの刺激間の刺激般化が増強する現象を指し,獲得差異性では異なる結果事情を対提示することによって刺激般化が低減される現象を指す.本研究では,ラットは食塩欠乏処置を受け,その後に食塩溶液と風味刺激AもしくはB,ショ糖溶液と風味刺激BもしくはAの対提示をそれぞれ受けた.その後,風味刺激Aに対して嫌悪条件づけを行い,風味刺激Bへの般化をテストした.その結果,食塩欠乏処置を行わないラットと比較して食塩欠乏処置を行った群では獲得等価性が形成されるのではなく,むしろ差異性が促進される傾向が見られた.この結果は,食塩欠乏処置によって情動が変化することが等価性形成のための共通結果事象として機能するのではなく,むしろ風味刺激と食塩溶液との連合を増強し,塩味と甘味という異なる結果事象の機能を強めたことを示唆している.申請者の過去の研究では,食塩欠乏処置によって食塩溶液が喚起する情動表象が変化することは,さらに食塩溶液の連合可能性の増強に寄与していることが示されており,今回の結果は情動表象の変化が直接的に獲得等価性の共通結果事象として機能するよりはむしろ,風味刺激・味覚刺激間の連合の程度を調節する役割を果たしていることを示していると考えられる.
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