2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算に基づいた次世代リチウムイオン電池用正極材料の開発
Project/Area Number |
02J05208
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小山 幸典 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | リチウムイオン電池 / リチウム遷移金属化合物 / 正極材料 / 量子化学 / 計算材料科学 |
Research Abstract |
本研究では,次世代リチウムイオン電池に重要な新規正極材料を開発するために,量子化学計算を用いた特性の理論予測と従来の電気化学的実験的を組み合わせた新しい材料開発手法によって,迅速な材料探索を目指している. 現在のリチウムイオン電池の正極材料にはリチウム・コバルト複合酸化物が使用されているが,これに代わる大容量かつ高電位な正極材料の開発が必要である.代替材料の一つとしてリチウム・ニッケル複合酸化物が期待されているが,この物質は大きな容量を持つ代わりに安全性を確保することが困難であるという欠点を持っている.本研究では,リチウム・コバルト複合酸化物-リチウム・ニッケル複合酸化物-リチウム・マンガン複合酸化物の擬3元系複合酸化物に注目し,複合酸化物の安定性を理論計算により調べた.その結果,ニッケルとマンガンを1:1の比で混合させることによって,+2価のニッケルイオンと+4価のマンガンイオンに電荷分離をさせることができ,この結果,極めて安定な化合物を得ることができることを発見した.また,リチウム・ニッケル複合酸化物では過充電によって二酸化ニッケルが容易に生成してしまうことが安全性を確保する上での大きな問題となっているが,コバルト・ニッケル・マンガンを1:1:1の比で混合させた複合酸化物では,前述した安定性に加え,充電後期において電位が大きく上昇することを理論計算で発見した.この電位の変化を上手く利用することにより,過充電による二酸化物の生成を容易に防止できると期待でき,また,この条件で期待できる容量は現行のリチウム・コバルト複合酸化物の容量よりも約30%大きいものである.以上のように,コバルト・ニッケル・マンガンの比が1:1:1である複合酸化物は,容量・安全性の面から次世代リチウムイオン電池用の正極材料として極めて有望であることを見出した.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 小山 幸典, 田中 功, 足立 裕彦, 牧村 嘉也, 小槻 勉: "Crystal and Electronic Structures of Superstructural Li_<1-x>[Co_<1/3>Ni_<1/3>Mn_<1/3>]O_2(0≦x≦1)"Journal of Power Sources. 119-121. 664-668 (2003)