2002 Fiscal Year Annual Research Report
硬X線望遠鏡の開発とそれを用いた銀河団の硬X線成分の起源解明
Project/Area Number |
02J05266
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 亮 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 銀河団 / 非熱的放射 / 硬X線 / 硬X線望遠鏡 / 多層膜 / ブラッグ反射 |
Research Abstract |
近年、銀河団からのX線スペクトルには、それを満す高温プラズマによる熱的放射に加えて非熱的放射も共存する可能性のあることが指摘されている。その起源としては、銀河団に閉じ込められた相対論的電子と3Kマイクロ波宇宙背景放射との逆コンプトン散乱や、未知の活動銀河核の存在などの可能性が挙げられる。この非熱的成分の起源解明には、未だ誰も成し得ていない高温プラズマからの熱的成分のX線強度が減少するおよそ10keV以上の硬X線領域での撮像観測が有効且つ唯一の手段である。 我々は、10keV以下のエネルギーで感度有する従来の軟X線望遠鏡に、鏡面物質として白金/炭素の多層膜を様々な周期長で積層し、ブラッグ反射を利用して幅広いエネルギー帯域で感度を有する手法を確立し、世界初の気球撮像観測を成功させた。本年度は、来る8月に行われる第二回目の気球実験に向け、この硬X線望遠鏡の更なる性能向上化を目指した開発、製作を行ってきた。 2000枚余りの反射鏡の製作工程を確立すると共に、主に以下の点において改良を加えた。第一に、従来と異なり、鏡面となる多層膜の面を十分なめらかなガラスの円筒面を写しとることで反射鏡の形状精度を改善させ、X線反射率の向上化を達成した。また、多層膜の設計パラメータの最適化を行い、有効エネルギー帯域の拡大化に成功した。加えて、2000枚余りの反射鏡を組み上げ保持する鏡筒の構造を一新し、これらの組み上げ時の位置決定精度を改善させることが可能となった。これらの改良により、硬X線望遠鏡の有効面積及び結像性能のさらなる向上が実現された。
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