2003 Fiscal Year Annual Research Report
硬X線望遠鏡の開発とそれを用いた銀河団の硬X線成分の起源解明
Project/Area Number |
02J05266
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 亮 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 硬X線 / X線望遠鏡 / 多層膜 / ブラッグ反射 / 多層膜スーパーミラー / 結像性能 |
Research Abstract |
10keV以下のエネルギーを持つX線に対して感度を有する従来の(軟)X線望遠鏡に、その鏡面物質として白金(Pt)/炭素(C)の多層膜を連続的に周期長を変化させて積層することで、ブラッグ反射を利用して幅広いエネルギー帯域で感度を有する硬X線望遠鏡の開発を気球実験を見据えて行なってきた。 本年度5月に完成した一台目の望遠鏡の性能は、有効面積は概ね予想通りの値が得られた。一方で結像性能は、鏡面を転写するレプリカ母型の形状の悪さと反射鏡基板の剛性不足により、満足いく結果を得ることができなかった。そこで、二台目の望遠鏡の製作行程において、反射鏡単体の結像性能の向上を目的として主に以下の改良を加えた。 第一に使用するレプリカ母型の選別を可視光平行光源装置を用いて行ない、得られた反射像から表面形状の良い物だけを使用して反射鏡鏡面をレプリカ法という転写技術を用いて製作した。加えて、反射鏡基板であるアルミニウム薄板の材質を変更して剛性を高め、レプリカ母型からの離型の際に生じる反射鏡の形状劣化を極力押さえることに成功した。その結果、試作望遠鏡の結像性能は1.7分角(HPD)を達成し、気球搭載要求をクリアするに至った。また、有効面積のさらなる向上を目指し、反射鏡鏡面の多層膜スーパーミラーの設計の最適化及び実用化を達成した。 2004年2月には以上の改良を加えた二台目の望遠鏡が完成した。そして同年5月に行なわれる気球実験に搭載し、科学観測を行なう予定である。
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