2002 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸塩岩の堆積構造解析によるスノーボール・アース仮説の検証
Project/Area Number |
02J05273
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
東條 文治 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スノーボール・アース仮説 / 原生代 / 炭酸塩岩 / キャップカーポネート / ドロマイト問題 / オタビ層群 / 氷河堆積物 / XGT |
Research Abstract |
原生代後期の地球が全球的に凍結したというスノーボール・アース仮説を検証するために,本年度はアフリカ・ナミビアで地質調査を行い,当時の地球気侯システムの重要な記録である炭酸塩岩の採取を行った.この試料は卓上研磨装置を用いて薄片など研磨試料として加工し,炭酸塩岩組織・元素・同位体分析を行った.原生代後期の氷河堆積物直上の炭酸塩岩については炭素・酸素・硫黄・ストロンチウム・カルシウムなどさまざまな元素の同位体比について分析が行われてきた.全体として他の時代にはみられない異常な変動がさまざまな元素の同位体比について報告されている.しかし,炭酸塩岩についてはドロマイト化などによる続成作用による変質によって初生的な情報ではないという経験的な見方が強く,これらの異常値はまさに変質による異常値であるという批判が主流となりスノーボール・アース仮説についての検討が十分に進まないという状態に陥っていた.しかし本年の地質調査によってこれまで続成作用によって形成されると考えられてきたドロマイトについて側方に良い対比ができ,堆積のごく初期にすでにドロマイトが形成されていたという決定的な証拠を積み上げることができた.また,持ち帰った炭酸塩岩の組織の観察によってこれらのドロマイトが変質によって形成されるものと異なる特徴的な組織をもつことが明らかになってきた.組織と対応させてカルサイト・ドロマイトでの同位体比の値が明確になるとこのドロマイトの形成メカニズムにまで迫れる可能性がある.この分析は現在分析途中である.この結果が出揃うと,これまでの考え方を大きく変える原生代の炭酸塩岩データの新解析法が提示できると考えている.予察的な結果であるが,今回採取した試料はスノーボール・アース仮説に整合的である.
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[Publications] 川上紳一, 東條文治: "7億年前の凍てついた地球"Nature Science. Vol.2,No.5. 92-99 (2002)
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[Publications] 東條文治: "アフリカ南西部ナミビアにおける地質調査記"日本地質学会 News. Vol.5,No.12. 24-25 (2002)