2002 Fiscal Year Annual Research Report
前庭刺激に対する脳の応答機構とその異常によるてんかん発症機構の解析
Project/Area Number |
02J05292
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中川 幸則 名古屋大学, 生物分子応答研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | てんかん / ELマウス / グルタミン酸神経 / 前庭刺激 / グルタミン酸トランスポーター |
Research Abstract |
てんかんでは外部刺激がけいれんを誘発させるものが多い。モデル動物のELマウスでは体位変換刺激(前庭刺激)が引き金になる。しかしそれら外部刺激の意味は全く不明だった。筆者は前庭刺激に対する脳の応答機構と、その異常性を体系的に明らかにするため、1)ELマウスとてんかん耐性のASKマウスについて、前庭刺激の有無による脳での種々の遺伝子発現の差スペクトルを取った。その結果、約1200個の候補遺伝子をスクリーニングでき、それらのシーケンスを行った。その結果、これまでQTL解析によりELマウスの原因遺伝子が存在すると言われていた、第2染色体上に40種の候補遺伝子が見付かった。次いでマクロアレイを作製して、現在解析中である。これまでのところ、前庭刺激によって発現が2.5倍-3倍に増加するもの8種、逆に1/3から、1/2に減少するもの19種の遺伝子がスクリーニングされた。現在、それら候補遺伝子一つひとつについてノザン解析により、それらの結果をさらに詳しく検討しており、関連遺伝子をさらに絞り込んでゆく計画である。一方、2)脳の主な興奮性神経であるグルタミン酸神経の各サブユニット、トランスポーターの役割りを明らかにするため、前庭刺激に対するそれらの遺伝子発現の変化を追跡した。その結果、てんかん耐性のASKマウスではELマウスと比べ、AMPA型受容体遺伝子の発現が抑えられていること、NMDA型受容体遺伝子、およびグルタミン酸トランスポーター遺伝子の発現が促進しているためであることを突き止めた。本研究はすでに論文として纏め、現在Molecular Brain Research誌に投稿中である。
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