2003 Fiscal Year Annual Research Report
RFPのエピジェネティックな転写制御機能の解析と発生・分化および発癌との関連
Project/Area Number |
02J05335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
下野 洋平 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | RET finger protein / Enhancer of Pelycomb 1 / Mi-2 / BRG1 / エピジェネティクス / 転写制御 / 精巣腫瘍 |
Research Abstract |
本研究の目的は、RET finger protein (RFP)を含む核内蛋白複合体によるエピジェネティックな転写制御メカニズムが、発生・分化および腫瘍形成に果たす役割を明らかにすることにある。これまでの検討でRFP結合蛋白としてEnhancer of Polycomb1(EPC1)及びMi-2βを同定し解析を進めてきた。EPCは転写活性化ドメイン及び転写抑制ドメインの両者をもち、精巣ではRFPの0-グリコシル化修飾がEPCとの結合に重要である事を示した。また、ヒト精巣腫瘍における検討では、RFPの発現がセミノーマ及びそのコンポーネントをもつ腫瘍に特異的に高いことを示した。 本年度は、RFPの転写抑制能におけるMi-2βの役割をさらに解析した。Mi-2は高率に悪性腫瘍を合併する皮膚筋炎の自己抗原蛋白であり、NuRD蛋白複合体の中心的構成蛋白である。酵母two-hybrid法による解析で、RFPがMi-2βのカルボキシル末端領域に結合することが判明した。免疫沈降法及び共焦点レーザー顕微鏡による観察にて、RFP、Mi-2及びヒストン脱アセチル化酵素の共存が示された。また、ルシフェラーゼアッセイ法による転写活性測定により、RFPの転写抑制能がMi-2βの共発現にて用量依存的に増強する事、及びRFPノックアウトマウスより樹立した線維芽細胞では、Mi-2βのカルボキシル末端領域の転写抑制能が消失し、RFPの共発現にてその抑制能が回復する事を示した。 一方、Mi-2βのアミノ末端領域には従来知られていなかった強い転写活性化能がみられた事から、酵母two-hybrid法にて結合蛋白のスクリーニングを行い、BRG1を同定した。BRG1はSWI/SNF蛋白複合体の中心的蛋白であり、腫瘍形成や、その発現と癌の予後との関連が解明されつつある。酵母two-hybrid法及び免疫沈降法による解析にて、BRG1とMi-2βが結合し、BRG1のブロモドメイン領域がMi-2βとの結合に関わる事を示した。Mi-2及びBRG1は、NuRD及びSWI/SNF蛋白複合体の構成蛋白であることから、両者の結合は、ALL-1やIkarosにより形成される蛋白複合体のようなさらに巨大な蛋白複合体の形成メカニズムに関与するものと思われる。また、RFP、Mi-2β及びBRG1の関連は、蛋白複合体を介したエピジェネティツクな転写制御メカニズムが、発生及び腫瘍形成に果たす役割を示唆するものと考えられる。
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Research Products
(1 results)