2004 Fiscal Year Annual Research Report
RFPのエピジェネティックな転写制御機能の解析と発生・分化および発癌との関連
Project/Area Number |
02J05335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
下野 洋平 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | RET finger protein / PIAS / SUMO / Mi-2β / 核小体 / 転写制御 / エピジェネティクス / MCRS1 |
Research Abstract |
本研究の目的は、RET finger protein(RFP)を含む核内蛋白複合体によるエピジェネティックな転写制御メカニズムが、発生・分化および腫瘍形成に果たす役割を明らかにすることにある。これまでの検討でRFP結合蛋白としてEnhancer of Polycomb 1(EPC1)及びクロマチンリモデリング蛋白Mi-2βを同定し解析した。精巣ではRFPの0-グリコシル化修飾がEPCとの結合に重要である事を示し、ヒト精巣腫瘍では、RFPの発現がセミノーマ及びそのコンポーネントをもつ腫瘍に特異的に高いことを示した。 本年度は、RFPの結合蛋白として、PIASファミリー蛋白と核小体蛋白MCRS1に注目し解析した。 PIASは近年SUMO化修飾のE3酵素であることが示されている。酵母two-hybrid法および免疫沈降法による検討で、RFPはPIASのPIAS1,3,x, yの全てのサブタイプと結合することが分かった。さらに、PIASはRFPをSUMO化して、RFPの核内局在を変化させ、転写抑制能を増強することが判明した。また、精巣では精母細胞内でRFPとSUMO-1が特徴的なキャップ構造内に共存することが分かった。以上の検討から、RFPのSUMO化は、転写活性および核内局在の制御に関与し、生理的には精子形成過程で働く可能性が示された。 核小体蛋白MCRS1は、EPC1のEPcAドメイン結合蛋白のスクリーニング過程で同定された。今回は、免疫沈降法と酵母two-hybrid法により、MCRS1がMi-2βおよびRFPと結合することを同定した。共焦点レーザー顕微鏡により、核蛋白であるRFPおよびMi-2は核小体にも局在し、MCRS1とも共存することを示した。また、MCRS1、Mi-2βおよびRFPはリボソーマルRNAのプロモーター領域に対して強い転写活性化能を示し、siRNAによる発現抑制によりリボソーマルRNAの産生を低下させた。以上の検討から、核内で転写抑制に働くRFPやMi-2βは、核小体ではリボソーマルRNA転写を活性化し細胞増殖に寄与している可能性が考えられた。
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