2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05480
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
さき山 潤一 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 器官形成 / 肺 / 遺伝子導入 / ニワトリ / 消化管 / 転写調節因子 / 組織間相互作用 |
Research Abstract |
肺原基の形成は、将来肺原基となる領域の内臓性中胚葉が、分泌因子をコードするFgf10を特異的に発現し、中胚葉で産生されたFgf10が隣接する内胚葉の膨出を促すことから始まる。私は、発生初期のニワトリ胚消化管において、T-box転写因子ファミリーに属する遺伝子、Tbx4が、Fgf10の発現領域とオーバーラップする形で予定肺原基領域の内臓性中胚葉に限局して発現することを見出した。 Tbx4の肺原基形成過程における機能を明らかにするため、in ovoエレクトロポレーション法を用いたTbx4の異所的強制発現実験を行った。Tbx4を異所的に発現している食道中胚葉ではFgf10の発現が異所的に誘導され、これに隣接した内胚葉では膨出(endodermal bud)が異所的に引き起こされた。同様にFgf10の異所的強制発現によっても食道内胚葉の異所的膨出が引き起こされたことから、Tbx4が、Fgf10の発現活性化を介して隣接する内胚葉の膨出を促す働きを持つことを明らかにした。トランスフェクションアッセイにおいてTbx4の転写活性化機能を阻害することが確認されたEnR融合タイプのTbx4(Tbx4-EnR)をin ovoで強制発現させることにより内在性Tbx4の機能阻害を行うと、Fgf10の発現が抑制されて肺原基内胚葉の膨出が阻害された。これらの結果から、Tbx4は、Fgf10の発現活性化に必要であり、Fgf10を介して肺原基内胚葉の最初の膨出を制御することを明らかにした。さらに、Tbx4あるいはFgf10を食道中胚葉で異所的に発現させることにより、隣接する内胚葉で呼吸器内胚葉のマーカー遺伝子Nkx2.1の発現が誘導された。したがって、Tbx4-Fgf10システムは、隣接する内胚葉に対して呼吸器内胚葉への分化を促す働きも持つことも明らかとなった。また、Tbx4の強制発現胚では、食道と気管を仕切る隔壁が形成されずに食道と気管の内胚葉が融合したままの状態となる食道気管瘻(Tracheo-esophageal fistula)を呈した。 本研究より、Tbx4が、肺原基の最初の膨出、呼吸器内胚葉への分化、呼吸器と食道の分離という肺の器官形成の多くの過程に重要な役割を果たす因子であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)