2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05601
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 尚子 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銅(Cu) / bioavailability / 植物への毒性(phytotoxicity) / 存在形態 / 発芽実験 |
Research Abstract |
1.水溶性有機物が水溶液中に共存することで水溶性重金属の毒性や可給性に影響がみられるかをレタス種子の発芽実験で明らかにした。最終濃度10ppmのCuに水溶性有機物としてクエン酸、リンゴ酸、シュウ酸の低分子有機酸、EDTA、DTPAのキレート剤、市販の腐植酸、森林土壌A、B層からの抽出水の計8種を3段階の濃度に調製して混合した。これら水溶液をろ紙を敷いたシャーレに5ml与え、レタス種子を10粒ずつまき人工気象室に設置し1週間後回収、発芽した種子の根長測定を行った後、葉と根に切断し80℃で48時間乾燥後硝酸分解し、各部位のCu濃度をICP-AESで測定した。結果、低分子有機酸はCuによる根の褐色化をCuだけのときよりさらに激化、根の伸長を抑制し、根へのCu吸収量を増加させた。また、低分子有機酸の混合濃度が高いほど褐色化の程度やCu吸収量が高まることが明らかとなった。EDTAなどキレート剤は低濃度のときは根の褐色化もCu吸収も防ぎ、根の伸長も改善されるなどキレート形成によると思われる毒性緩和効果が見られたが、高濃度になるとキレート剤固有の毒性が現れた。腐植酸も褐色化を防ぎ、根の伸長も改善させ、またCu吸収も減少させた。森林土壌抽出水の効果は他の物質のように明らかではなかったがCu毒性緩和の傾向が見られた。 2.東大附属演習林樹芸研究所内の銅ズリ鉱堆積場で採取したズリ鉱と森林土壌A、B層を混合した試料、または硫酸酸性であるズリ鉱をCaCO_3、NaOHでpH6.4に中和した試料を用意し、これらをシャーレに詰め、上記同様にレタスの発芽実験を行った。また土壌試料の溶出実験を行い、レタスが吸収する可能性のあるCuの量を測定した。結果、森林土壌を混合したものはズリ鉱に対する混合割合が高いほど、レタスの根の褐色化緩和、根の伸長改善が見られた。また、A層の方がより高いズリ鉱由来毒性の緩和効果が見られた。土壌試料の溶出実験の結果から、これら土壌との混合によるズリ鉱の希釈だけではなく、有機物などCuと親和性の高い吸着サイトへの結合によりCuが試料中で安定な形態なっているため土壌水中に溶出するCuが顕著に減少していることが明らかになった。中和試料では、両試料からのcu溶出量はほとんど変わらないのに、レタスの根の褐色化や根長には明らかな違いが見られた。CaCO_3施用区ではズリ鉱由来の毒性がほとんど相殺されたのに対し、NaOH施用区ではズリ鉱のみでレタス種子を発芽させた場合よりわずかに根が伸長しただけであった。この違いはCaによるCuとの競合によりCaCO_3施用区でCu吸収が阻害されたか、NaOH施用区ではNaOHにより試料中のSiO_2などの構造が破壊され、Alなどの元素が多量に溶出したためではないかと考えられる。回収したレタス発芽種子中のCu含有量を分析し、さらにCuの挙動を明らかにする予定である。
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