2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05601
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 尚子 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Cu / bioavailability / phytotoxicity / 土壌改良資材 / ズリ鉱 |
Research Abstract |
本研究対象地のズリ鉱堆積場では高濃度かつ可溶性のCuが植物の活着を抑制していると考えられる。この土壌に腐葉土を混合しCuを有機態にして安定化させたり、土壌のpHを上昇させてCuを沈殿させたりすることで、Cu毒性を緩和し、植物の生育を促進できるのではないかと考えた。今年度はスギ苗木を供試植物として用い、これを確かめた。まず、根箱を用いたポット実験では、現場で採取したズリ鉱を乳鉢で粉砕し粉末にしたものに腐葉土、赤玉土、砂とCaCO_3を改良資材として施用した。その結果、どの改良資材によってもズリ鉱のみの区に比べて土壌試料中の水溶性Cu濃度を低下させることができた。スギ苗木中のCu濃度は、砂混合区ではズリ鉱のみの区より増加したが、他の処理区では減少した。また、生育状態は、ズリ鉱のみの区とCaCO_3区では悪かったが、他の処理区では大幅な改善が見られた。CaCO_3区では水溶性Cu濃度はほとんど検出されないレベルであり、またスギ苗木中のCu濃度も低いのに対し、生育状態が悪かったことは、Cu以外が生育阻害要因であることを示唆している。本研究ではズリ鉱のみの区として、粉末状のズリ鉱を用いたが、このため土壌孔隙に乏しくなった。本研究における主な生育阻害要因はこのような土壌の物理性に由来すると考えられる。すなはち、腐葉土、赤玉土や砂によって土壌孔隙が増加し、スギ苗木の生育も改善されたが、CaCO_3区では物理性が改善されなかったため、生育が悪かったと考えられる。また、砂区ではスギ苗木中のCu濃度が高かったが、これはこの処理区では根のはたらきが活発になり、可溶性でないCuを積極的に吸収したためと考えられる。可能性のひとつとして、低分子の根分泌物が増加し、これが固相のCuを可溶化したことが考えられた。このことから植物のCu吸収において、土壌中の可溶性のCuだけでなく、植物の機能も大きく関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)