2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05601
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 尚子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 重金属汚染土壌 / 重金属の存在形態 / 連続抽出法 / bioavailability / 重金属毒性暖和 / 重金属吸収抑制 |
Research Abstract |
・修士論文の研究で、森林土壌にCuを添加しその存在形態を連続抽出法によって調べたが、行った抽出法によるCuの回収率は50-80%で、抽出されなかった部分の存在形態については不明であった。今年度、これを明らかにするためさらに実験を行い、修士論の研究で回収されなかった部分のCuは難分解性の有機物と結合していたことが明らかになった。この結果から、森林土壌にCuを添加した場合、Cuの大部分が易分解性、難分解性いずれかの有機物と結合して存在し、また、難分解性の有機物と結合しているCuは土壌微生物の作用によってbioavailabilityのやや高い炭酸塩結合画分として抽出される形態に変化することが示唆された。これを国際学会(Rhizosphere, Preferential flow and Bioavailability : A holistic view of soil-to-plant transfer)で発表した。論文作成中。 ・森林土壌の溶存有機物によるCuのキレート形成が、Cu(10ppm水溶液)の植物に対する毒性、移動性、bioavailabilityを変化させるかどうかをレタスの発芽実験で調べた(現在も続行中)。また、EDTAや低分子有機酸などによる同様の効果についても調べた。この結果、森林土壌B層抽出液(TOC20ppm)ではCu弱毒化効果はほとんどみられなかったが、A層土壌抽出液(TOC200ppm)では根の褐色化や、葉の褐色斑点を減少させる効果が確認された。Cu水溶液のみを与えた時に比べ、A層土壊抽出液を加えた時は、レタス発芽種子中のCu含有量が地上部、根部ともに半分以下に抑えられていたことから、種子外でCuが土壌抽出液中の(高分子有機酸と推測される)成分とキレート形成し、種子体内中に吸収されにくい形態になったと考えられる。有機酸を調製してCn水溶液に加えた実験では、クエン酸やリンゴ酸、シュウ酸によるCu吸収抑制や弱毒化効果はほとんどみられなかった。むしろこれらの低分子有機酸は高濃度になると低濃度の時よりレタス種子の成長を抑制した。EDTAを加えるとCuはほとんど吸収されなかったが、EDTAによる成長阻害がみられた。Cu水溶液に腐植酸(市販)を加えた場合、Cuの弱毒化効果が最も良好であった(Cu濃度は未分析)。夏に学会発表、論文投稿予定。 ・東大樹芸研究所内の銅ズリ鉱堆積場におけるCuの存在状態を分析し、同研究所の研究発表会で発表した。土壌中に高濃度のCuが存在する場所があったが、水系への流出はみられず、現在深刻な問題はないと思われる。
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