2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05651
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯久保 智 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | カルコゲナイドスピノル / 磁気構造 / 異常ホール効果 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体に代表される、磁性と伝導が強く結合するような系においては様々な興味深い物性が現れる。そのひとつとして、強磁性体金属の異常ホール効果があげられる。それに関する研究は数多く行われているが、メカニズムは未解決な問題として残っている。我々のグループでは、この異常ホール効果にnon-trivialな磁気構造が何らかの影響を与えているという実験結果を様々な系において観測している。そのなかでスピネル型化合物Cu_<1-x>Zn_xCr_2Se_4の系を用いてその寄与の仕方について調べた。 この系は、磁気的な性質をCrの磁気モーメントのみが担うという点でnon-trivialな磁気構造の影響が観測しやすいと考えられる。ホール抵抗測定、磁化測定、中性子回折実験、NMR測定を行い詳しく調べた。この系の多結晶試料を用いた実験結果をもとに、0.2<x≦0.8の試料で実現するconicalな磁気構造と異常ホール係数の符号反転に対応関係がみられることを明らかにした。また、non-trivialな磁気構造、すなわちスピンカイラリティーχ(≡S_1・(S_2×S_3))の秩序化が異常ホール効果に寄与するという興味深い提案もあり、多結晶試料の結果は一部この理論と対応するようにも見える。 それに加えて単結晶試料を用いた磁気構造解析を行った。単結晶試料を用いることにより、ホール抵抗の磁場方向依存性や粉末試料では明らかにすることができなかった磁気構造の詳細な情報を得ることができた。単結晶試料の中性子回折実験でincommensurateな超格子反射を含む、磁気反射を測定した。その結果よりこの系はχが有限の値を持つ磁気構造をとっているものと思われる。 我々のグループでは同様の単結晶試料を用いたホール抵抗の測定、さらに不純物効果の観測も行っており、この系の異常ホール効果に対して、詳しい磁気構造の情報をもとにnon-trivialな磁気構造がホール抵抗に与える影響、さらにはスピンカイラルオーダーメカニズムとの対応を今後さらに明らかにしていきたい。
|
Research Products
(1 results)