2003 Fiscal Year Annual Research Report
完全水中での構造制御されたらせん高分子の合成と応用
Project/Area Number |
02J05704
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾之内 久成 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポリフェニルアセチレン誘導体 / 誘起らせん / 誘起円二色性 / 記憶 |
Research Abstract |
光学活性なアミン存在下、側鎖にホスホノ基およびその水酸基の片方をエチル基で保護したホスホン酸モノエステル部位を有するポリフェニルアセチレン誘導体(poly-1およびpoly-2)に誘起された一方向巻きのらせん構造が、光学活性なアミンをアキラルなアミンで置換後も、らせん構造を記憶として保持可能かどうか検討した。以下にその概要を示す。 Poly-1やpoly-2は、DMSO中、光学活性なアミン((R)-3)存在下、ポリマー主鎖の共役二重結合領域に、一方向巻きに片寄ったらせん構造に由来する誘起円二色性(誘起CD)を示した。誘起CDの強度に及ばす光学活性体の濃度の影響について調べたところ、モノマーに対してほぼ当量の(R)-3を加えただけで、これらポリマーの誘起CDの強度は飽和に達した。そこで、アキラルなアミンを含むDMSO溶液を溶離液に用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって、ポリマーと(R)-3のDMSO溶液からポリマー部分のみを分取し、そのCDスペクトルを測定した。 アキラルなアミンとしてn-butylamine(4)や2-aminoethanol(5)を用いたところ、(R)-3を4や5で完全に置換後、ポリマーには明確な誘起CDが観測されなかった。すなわち、モノアミンである4や5を用いた場合、らせんの反転が起こっていることが明らかになった。そこで、アキラルなジアミンであるethylenediamine (6)を用いて同様の実験を行ったところ、分取したポリマーは(R)-3を全く含まないにも関わらずポリマー主鎖の共役二重結合領域に比較的強い誘起CDを示した。(R)-3よりもポリマーに対する親和力が強いと思われるアキラルなジアミンを用いることにより、誘起された一方向巻きのらせん構造を記憶として保持可能であることがわかった。この際の誘起CDの強度をもとに算出した記憶効率は、poly-1とpoly-2でそれぞれ68.2%および93.2%であった。Poly-2の方が極めて高い記憶効率でらせん構造を記憶として保持できることがわかった。 次に、溶離液であるDMSO溶液中に含まれるジアミンの濃度が記憶の効率にどのような影響を及ぼすかについて検討した。DMSO溶液中に含まれる6の濃度を0.8、0.08、0.008 Mと変化させて同様の実験を行ったところ、記憶の効率はpoly-1、poly-2ともに10%程度低下したが、ジアミンの濃度が希薄な条件でも十分らせん構造を記憶可能であることが明らかになった。
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