2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌の感染初期における分子応答機構の解析
Project/Area Number |
02J05878
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 元人 岡山大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アブラナ科炭そ病菌 / 遺伝子タギング / アグロバクテリウム / 根頭がん腫病菌 / シロイヌナズナ / TAIL-PCR |
Research Abstract |
本研究の目的である植物病原糸状菌の感染初期における分子応答機構の解明には、より多くの病原性変異株の獲得と解析が望ましく、そのためには安定した形質転換体作出法の確立が重要である。そこで本年度は、アブラナ科野菜類炭そ病菌の遺伝子タギング実験系にアグロバクテリウム(AtMT)形質転換法が適用できるかどうか検討した。 1.AtMT法を用いた糸状菌形質転換体の作出 ハイグロマイシン耐性遺伝子をT-DNA領域に導入することによって糸状菌形質転換用ベクターpBIG2RHPH2を構築した。本ベクターを導入した根頭がん腫病菌とアブラナ科野菜類炭そ病菌野生株胞子を種々の条件下で共培養したところ、最適条件下で胞子10^6個当り150-300株の形質転換体を得ることができた。本法を用いて総計約3000株の形質転換体の回収に成功した。 2.糸状菌形質転換体の評価 任意に選抜した26菌株についてサザンブロット分析を行い、T-DNAの挿入様式およびコピー数の確認を行った。その結果、21菌株で1コピー、5菌株で2コピー挿入が確認された。31個のT-DNA挿入のうち、T-DNA末端に欠失が認められたのはわずかに6個であった。1コピーのT-DNAの挿入が確認された形質転換体8株について、TAIL-PCR法による遺伝子レスキューを試みた。その結果、すべての菌株においてT-DNA末端に隣接する糸状菌ゲノム領域を確認できた。 3.病原性変異株のスクリーニング 宿主葉への接種試験により、病原性変異株のスクリーニングを行っている。現時点で、形質転換体約1000株のスクリーニングを完了しており、8株の病原性変異候補株が得られている。 今回、AtNT法を用いることにより、簡便かつ高効率で形質転換体が得られること、またTAIL-PCR法による高効率の遺伝子レスキューが可能であることが判明した。以上の結果から、本法はアブラナ科野菜類炭そ病菌の遺伝子タギングに極めて有効な手段であると考えられた。現在、得られた病原性変異株の性状および遺伝子解析を行っている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] G.Tsuji, S.Tsuge, T.Shiraishi, Y.Kubo: "Expression of melanin biosynthesis enzymes during infectious morphogenesis of Colletotrichum lagenarium"Journal of General Plant Pathology. 69・3(in press). (2003)
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[Publications] G.Tsuji, S.Fujii, S.Tsuge, T.Shiraishi, Y.Kubo: "The Colletotrichum lagenarium Ste12-like gene CST1 is essential for appressorium penetration"Molecular Plant-Microbe Interaction. 16(in press). (2003)
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[Publications] G.Tsuji S.Fujii, N.Fujihara, C.Hirose, S.Tsuge, T.Shiraishi, Y.Kubo: "Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation for random insertional mutagenesis in Colletotrichum lagenarium"Journal of General Plant Pathology. 69・4(in press). (2003)