2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05940
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大竹 晋 筑波大学, 哲学・思想学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 華厳経 / 華厳思想 / 菩提留支 |
Research Abstract |
インドからアジア各地に伝わった『華厳経』は、各地においてその地特有の華厳思想を生み出した。そのような『華厳経』および華厳思想の展開を跡づけるのがわたくしの研究である。 インドの華厳思想を代表するヴァスバンドゥの『十地経論』は、インド人菩提留支(ボーディルチ)によって伝えられ、中国に広まったが、この菩提留支は漢文による著作『金剛仙論』を残しており、その中には『十地経論』に基づく思想が多く見受けられる。わたくしは竹村牧男氏とともに、『金剛仙論』を訓読・注解し、今年度にはその前半部分を出版した(後半部分は来年度に出版の予定)。この出版によって、インドから中国への華厳思想の展開をたどる足がかりができたと考える。また、菩提留支研究の一部として、『大乗起信論』に引用される文献についての論文を執筆・公刊した。同論は、漢文としてのみ存在するが、『金剛仙論』と似通った部分を有するため、インド語からの漢訳でなく、菩提留支の思想に基づき中国で作られたと思われる。この論文では、『大乗起信論』に引用される九つの文献の出典を調査し、そのすべてをインド仏教文献のうちに見い出した。その九つの文献の中には、『華厳経』性起品も含まれ、インドから中国への華厳思想の展開の一例が知られる。そのほか、チベット語訳インド仏教文献『Vivrtaguhyarthapinda-vyakhya』に引用される文献について論文も執筆・公刊した。この書は『華厳経』を再考の経だと述べており、『華厳経』の流行を示す重要資料である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 大竹 晋: "Vivrtaguhyarthapindavyakhyaの引用文献"東方学. 106. 124-138 (2003)
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[Publications] 大竹 晋: "『大乗起信論』の引用文献"哲学・思想論叢. 22(印刷中). (2004)
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[Publications] 竹村牧男, 大竹晋: "金剛仙論 上"大蔵出版. 334 (2003)