2002 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子レベルでの光物性研究と新規機能性薄膜の創製
Project/Area Number |
02J06018
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
保田 諭 筑波大学, 物理工学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | アゾベンゼン / 走査型トンネル顕微鏡(STM) / シス-トランス変化 / ドデカンチオール / 光スイッチ / 自己組織化単分子膜(SAM) / ナノスケール / 二成分混合膜 |
Research Abstract |
光活性なアゾベンゼンを用いたナノ光スイッチの創製を目標として、ドデカンチオール自己組織化膜(SAM)中に、孤立した形態でアゾベンゼンを吸着させた二分子混合膜を作成し、光STMを用いてアゾベンゼン分子の光応答性の評価・解析を行った。以下に得られた結果を述べる。 初めに、光STMでの測定が可能なように、ドデカンチオール中に孤立状態でアゾベンゼンが吸着した混合単分子膜の作成を試みた。ドデカンチオール単分子膜が形成した基板を、アゾベンゼン溶液に最適な濃度・浸漬時間で浸漬することにより、ドデカンチオール単分子膜中に存在するドメイン境界や、エッチピットなどの欠陥部位に単一分子でアゾベンゼンが吸着するのをSTMにより初めて明らかにした。これらの結果は、同時に、濃度や浸漬時間などにより吸着密度やその形態を制御可能であることを示すもので、今後、高機能な光スイッチを実現する上で重要な知見が得られた。 以上の最適化された混合単分子膜に光STMを適応し、孤立アゾベンゼンの光応答性について評価・解析を行った。その結果、可視光照射時では、STMによりドデンカンチオール膜に比べ明るい輝点として観察されたが、紫外線照射により、周囲のドデカンチオールとほぼ同じ明るさ、もしくは、輝点が暗くなる様子が観察された。また、再度、可視光を照射することにより、明るい輝点として戻るのが観察された。アゾベンゼン分子は、紫外光照射により、分子構造が伸びたトランス状態から縮んだシス状態に可逆的に光異性化することが知られている。これらの光照射により観察された可逆的な輝点の明るさの変化は、アゾベンゼンの光異性化に対応するもので、STMを用いて単一分子レベルでアゾベンゼン分子の光応答測定に初めて成功し、ナノスケールでの光スイッチ実現に必要不可欠な基礎的知見が得られた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Nakamura, S.Yasuda, T.Miyamae, H.Nozoye, N.Kobayashi, H.Kondoh, I.Nakai, T.Ohta, D.Yoshimura, M.Matsumoto: "Effective Insulating Properties of Autooxidized Monolayers Using Organic Ditellurides"Journal of American Chemical Society. 124. 12642-12643 (2002)
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[Publications] K.Miyake, S.Yasuda, A.Harada, J.Sumaoka, M.Komiyama, H.Shigekawa: "Formation Process of Cyclodextrin Necklace -Analysis of hydrogen bonding on a molecular level-"Journal of American Chemical Society. (Accepted). (2003)