2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属触媒における活性中心-ステップエッジの機能と電子状態
Project/Area Number |
02J06050
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中野 美尚 筑波大学, 物質工学系, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ステップエッジ / 触媒 / ニッケル / 炭素生成 / 一酸化炭素 / エチレン / 硫黄 |
Research Abstract |
金属表面で原子が階段状に配列したステップエッジは電子的に配位不飽和で反応性に富んでいることが示唆されている。ステップエッジでの反応性・メカニズムを解明するため、原子を直接観察できる走査型トンネル顕微鏡を用いてNi(111)表面上でCOとC_2H_4の解離吸着反応を行いステップエッジの寄与を調べた。COの場合生成したカーバイド状炭素はステップエッジに局在化し、ステップエッジで解離反応が起こることが分かった。さらに、500Kで生成したカーバイドは表面にとどまらず一度バルク内へ拡散し、300Kで再びステップエッジから表面へ析出するという興味深い反応過程が見いだされた。一方、C_2H_4の場合、COの場合とは対照的に、生成したカーバイドはテラス上に存在し、解離反応がテラス上で起こることが分かった。またC_2H_4から生成したカーバイドにはバルク中への拡散は見られ無かった。COの場合にバルク中へカーバイドが拡散することから、ステップエッジで生成したカーバイドのみがバルク中へ拡散すると考えられる。さらに、生成したカーバイドによる表面構造もCOとC_2H_4では大きく異なっていた。今までの研究では同じカーバイドであり区別できなかったが、本研究でSTMを用いることでその違いが明らかとなった。この構造の違いは反応性にも影響していると考えられ、触媒作用を制御する上で重要な要素になる。さらに、COとC_2H_4の解離吸着からの炭素生成反応に対する硫黄の効果も調べた。硫黄の被毒効果はNi上でのCOの水素化反応や他の触媒反応においても多く報告されており興味深い系である。結果、Ni表面上に硫黄が観察されるにもかかわらず生成した表面炭素量に変化がないこと、すなわちCOとC_2H_4の解離吸着が硫黄の上でも起こることが分かった。この結果はCOのメタン化反応における被毒効果がカーバイドの生成以降にあることを示している。
|