2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト老化モデル細胞を用いたmtDNA突然変異と呼吸機能低下との因果関係の解明
Project/Area Number |
02J06286
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 朋子 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒトミトコンドリア / ミトコンドリアDNA(mtDNA) / 病原性突然変異 / ミトコンドリア間相互作用 / 呼吸機能 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異なるtRNA遺伝子に突然変異を持つ2種の呼吸欠損ミトコンドリアを同一細胞質内に共存させたハイブリッド細胞では、消失しでいた呼吸機能が回復した事から、ヒトミトコシドリア間に物質交換が存在する事を既に報告している。このミトコンドリア間相互作用は、加齢とともに蓄積するmtDNA突然変異による呼吸機能低下を回避できるシステムであると考えられるが、全ての突然変異に対して有効に機能するかは不明である。そこで、同一の遺伝子に異なる病原性突然変異を持つ2種の呼吸欠損ミトコンドリアを単一細胞質内に共存させ、ミトコンドリア間相互作用の有効性を検証した。 まず、親細胞として、mtDNAのtRNA^<Leu(UUR)>遺伝子に病原性突然変異を持つ2種の呼吸欠揖細胞を単離した。一つはA3243G突然変異型mtDNA(A3243G mtDNA)を100%の割合で持ち、呼吸機能の指標であるcytochrome c oxidase(COX)活性が全く無い細胞(A3243G細胞)で、もう一つは、T3271C突然変異型mtDNA(T3271C mtDNA)を100%の割合で持ち、COX活性が正常細胞の約30%しかない細胞(T3271C細胞)である。これらの2種の細胞を融合させ、作製したハイブリッド細胞のCOX活惟を測定した。その結果、ハイブリッド細胞COX活性は、A3243G mtDNAの存在比が50%以下(T3271C mtDNAの存在比50%以上)である場合、T3271C細胞のそれと同程度であり、50〜80%の場合では、A3243G mtDNAの存在比依存的に低下し、80%を超える(T3271C mtDNAの存在比20%以下)と、A3243G細胞と同様に完全に呼吸欠損となった。しかし、2種の親細胞を共培養した場合のCOX活性は、A3243G mtDNAの存在比に比例して低下する事から、ハイブリッド細胞内に共存させた2種の呼吸欠損ミトコンドリア間で相互作用が存在する事が示唆された。 mtDNAの同一遺伝子に異なる突然変異が蓄積した場合、ミトコンドリア間相互作用が存在しても、呼吸機能を相補できない事が分かった。この結果とこれまでの成果から、呼吸機能の相補には正常な遺伝子産物の交換が必要である事が示唆された。 以上の結果は、国際速報誌であるBiochem.Biophys.Res.Commun.誌に掲載された。
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Research Products
(1 results)