2002 Fiscal Year Annual Research Report
文章理解のオンライン処理過程における自動的処理成分と制御的処理成分
Project/Area Number |
02J06303
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井関 龍太 筑波大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テキスト理解 / オンライン推論 / 活性化ユニット / 意味記憶 |
Research Abstract |
テキストを理解するときにオンラインで生じる推論の活性化ユニットについて実験的に検討した。既存の課題では,推論の活性化が単語ユニットの活性化であるのか,命題以上のユニットの活性化であるのかを弁別できないため,新たに有意味性判断課題を考案した。この課題では短い文が意味をなすかどうかを短時間で判断するよう求めた("本を読んだ"は意味が通る,"本をもいだ"は意味が通らないなど)。実験はコンピュータ制御であり,推論を喚起する文章か,ターゲットとする推論を喚起しない文章のいずれかを提示した後に,有意味性判断課題を行った。当該の文章がターゲットとする推論を喚起するか否かについては2度の予備調査を行った(それぞれ,288名,144名の大学生を対象とした)。 実験1では,3種類のターゲット文を用いた。推論ターゲットは推論内容を反映する文,名詞一致ターゲットは名詞部分のみ推論内容を反映する文,動詞一致ターゲットは動詞部分のみ推論内容を反映する文であった。推論が単語ユニットの活性化であればいずれの文にもプライミング効果が見られ,命題以上のユニットの活性化であれば,推論ターゲットについてのみ促進効果が見られると予想された。22名の大学生を対象に実験を行ったところ,推論ターゲットを用いた場合にのみ,推論喚起による促進効果が見出された。 実験2では,有意味性判断課題の単語の活性化に対する敏感性を調べるため,8名の被験者に対して実験を行った。その結果,この課題は単一単語の活性化にも対応することが可能であり,実験1の結果の解釈の妥当性が支持された。実験3では,16名の被験者に対して,同一の状況を述べる文であれば特定の単語を含まないターゲット文であってもプライミング効果が見られるかを検討した。この実験は実験1の追試を含んだ。結果は,推論の活性化は命題以上のユニットの活性化であるという解釈を支持した。
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