2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J06349
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
板井 広明 中央大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ベンサム / マイノリティー / 同性愛 / 女性 |
Research Abstract |
本研究では、J・ベンサムの唱導した「最大多数の最大幸福」の原理が、一方で18世紀末のイングランドにおける貴族の少数者支配に対する多数の民衆利益を代表し、それを擁護するものとして、他方で当時の社会における被抑圧者としての少数者を擁護するものとして、政治・経済・社会改革の原理として掲げられていることを分析し、とくに女性や同性愛者といった被抑圧者に関するベンサムの議論に即して、それらを整合的に理解できることを目的としている。 本年度は、ベンサムが3期にわたって執筆し展開した同性愛行為擁護論(Essay on Paedrasty, Essay on Taste)を中心にして、この問題と関わる限りでのベンサムの女性論(ジェンダー的視点など)の考察、同性愛行為の存在が人口減少をもたらすとされることに対するベンサムの批判を検討した。 基本的に18世紀の同性愛をめぐる社会状況を念頭に置いて再構成することを心がけ、8月20日〜9月12日にわたりロンドン大学のUniversity College Londonにあるベンサム・プロジェクトで、ベンサムの同性愛・女性に関する草稿や資料を発掘・整理し、また18世紀イングランドの民衆社会史に関する史料や諸研究を参照しつつ、同プロジェクトのPhilip Schofield氏と意見交換を行ない、研究を進めた。 9月には『社会思想史研究』に「ベンサムの快楽主義の位相とマイノリティー問題〜『男色論』を中心にして〜」として、ベンサムの同性愛行為擁護論を軸に、ベンサムの快楽主義的功利主義の特質を議論した論文を掲載した。本格的なベンサムの同性愛行為擁護論の前段になるものである。 また3月29日にはイギリス哲学会第27回研究大会にて個人研究「ベンサムの女性論」を研究途中経過の成果として報告した。
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Research Products
(1 results)