2002 Fiscal Year Annual Research Report
下水道行政の構造分析-現代行政におけるコンフリクトと政府間関係-
Project/Area Number |
02J06354
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
嶋田 暁文 中央大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 下水道行政 / 地方の動員 / セクショナリズム / 現代型訴訟 / コンフリクト / 新しい社会運動 / ガバナンス / ガバメンタル・システム |
Research Abstract |
本年度の主たる業績としては、葉山町下水道住民訴訟第1審判決を1つの素材としつつ、現代型訴訟としての下水道住民訴訟が有している可能性を論じた論文がある。 当該論文は3部からなるが、「上」では、従前の行政学・政治学では十分活用されてこなかった法学情報としての判決文を用いている。これには、実証研究の際に多々困難が生じる事実認定の問題を、判決という公式情報に依拠することでクリアするという戦略的な意図がある。また、判決内容検討を通じて下水道裁判において何が問題とされているのかを整理しそれへの一定の評価を行うことで、本論文が政策研究にも寄与することも意図している。 「中」では、下水道裁判で問題とされている「過大で著しく費用のかかる下水道事業が実施される」傾向が何故に生じるのか、政治・行政システムに着目し、その諸要因を抽出している。具体的には、近年の地方財政研究における事業費補正を通じた単独事業への地方の動員に関する先行研究や、近年の行政学における技官研究を摂取しつつ分析をしている。析出された要因は複数に渡るが、それらが相互に結びつき合いながら構造的に作用しつつ、コンフリクトをシステム内に許容しえない「閉じたガバメンタル・システム」の形成に結びついていることがここでの主張である。 なお、まだ未公刊の「下」では、「新しい社会運動」に関する社会学における蓄積、現代型訴訟に関する法社会学等の先行研究を生かしながら、閉じたガバメンタル・システムにおいて下水道住民訴訟が有する可能性を明らかにする予定である。「上」で見たように一連の下水道住民訴訟は、一定の限界を有しており「閉じたガバメンタル・システム」を打破するところまではいかないものの、「コンフリクトを許容する、開かれたガバメンタル・システム」への転換の第一歩につながる可能性を有している、というのが結論的主張である。
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Research Products
(2 results)