2003 Fiscal Year Annual Research Report
くし型電極による超流動ヘリウム3薄膜の臨界流密度の研究
Project/Area Number |
02J06386
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斎藤 政通 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超流動ヘリウム3薄膜 / 超低温 / サイズ効果 / 臨界流 |
Research Abstract |
^3Heは約1mK以下の超低温下で超流動状態となり、異方的なP波クーパー対のもたらす内部自由度に起因し、多彩な性質を示す。特に、厚さ1μm程度以下の薄膜の超流動状態では、境界の影響が強まるために、バルクと異なる性質の顕在化が予想されている。また、制限された空間内での異方的クーパー対としての観点から、超流動^3He薄膜は、p波超伝導体や高温超伝導体(d波)など、電子系での対凝縮現象の理解にも共通する普遍的な知見を我々にもたらす研究対象である。 昨今の微細加工技術の発展により、くし型電極という微細構造装置の開発が可能となり、1mK以下の超低温環境下での膜厚1μm以下の微小量サンプルの精密な制御・測定が可能となり、これまで困難とされてきた、超流動^3He薄膜の振舞いを系統的かつ精密に測定する実験が可能となった。 実験の結果、流れの駆動速度を徐々に早めたとき、超流動特有の散逸の無い流れから、散逸的流れへの転移として臨界流を捉えることができ、0.6〜0.25μmの薄膜についての臨界流密度J_cの温度依存性を、初めて測定することができた。その結果、0.4μmより膜厚の薄い領域ではJ_cがコヒーレンス長と膜厚の比で記述され、これより厚い領域ではそれと異なる傾向が明らかとなった。この結果は、エネルギー・ギャップに依存した散逸から、他の散逸構造への変化によるものと考えられ、散逸の有無という超流動状態を最も端的に表す性質において、空間サイズの及ぼす影響に関する新しい知見を得ることができた。
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[Publications] Masamichi Saitoh: "Study of dynamical properties of superfluid ^3He film flow by inter-digitated capacitors"Physica B. 329-333. 131 (2003)
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[Publications] Masamichi Saitoh: "Measurement of Superfluid ^3He Film Flow by Inter-digitated Capacitors"Journal of Low Temperature Physics. 134・1/2. 357 (2004)