2003 Fiscal Year Annual Research Report
イタリアにおける歴史的建造物の転用活用に関する研究
Project/Area Number |
02J06387
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉藤 哲也 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミラノ / 歴史的建造物 / 公的用途 / 保存活用 / 転用 / 修道院建築 / 適応性 / 動線的階層性 |
Research Abstract |
本研究では、ミラノ市を中心とする修道院建築の転用活用事例を対象に現地調査と分析を行い、不特定多数が利用する公的用途への適応性について考察した。まず前年度の研究成果に基づき、中庭を中心とする空間構成の変化において、特徴的にみられた柱廊部分のガラスによる室内化の建築的介入に注目し、この介入によって得られた空間の機能が空間構成に与える影響について分析した。大きく室利用と通路利用に分けることで、修道院建築全体の空間構成において異なる動線的階層性を形成していることが分かり、美術館などの管理側主体の用途か、大学キャンパスのような利用者側主体の用途かの転用用途による影響が大きくみられた。これから、既存空間の転用活用において同一の介入手法であっても与えられる空間機能に応じて異なる動線的階層性が形成され、適性な公的空間へと適応化していることが分かった。さらに1月6日より1月15日にかけて、対象事例の追加調査および資料収集を行い、断面方向における介入の特性を把握した。断面方向において増床に関わる介入は大きく「地下増床」「屋内増床」「屋外増床」が確認でき、屋内増床では、平面分析でも柱廊部などにみられた「室内化」、中二階などの新設床を設けた「多層化」が多い。屋外増床では、別棟を建て渡り廊下で既存と連結させる「増築」、独立した構造体で既存翼部に室群を付設する「付設」がみられた。また、減床に関わる介入においては、エレベータや非常用階段などの縦動線設置のための吹き抜け、また最上階におけるトップライトの増設が確認できた。特に最上階や屋根裏に相当する空間は、内装においても保存的価値が低いため積極的な介入が行われ、ホテルの客室や教官個室、小会議室など、変化に富んだ空間で幅広い用途に活用されていることが分かった。
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Research Products
(1 results)