2004 Fiscal Year Annual Research Report
液晶場における主鎖型高分子の特異な配向挙動と鎖状形態
Project/Area Number |
02J06390
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 健介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スメクチック液晶 / 主鎖型液晶高分子 / ラメラ構造 / 動的粘弾性 / chain folding / X線回折測定 / 力学測定 / 力学緩和 |
Research Abstract |
液晶相における高分子のモルフォロジーに関する知見はほとんど手つかずの状態である。我々は現在までの研究により液晶場にラメラが熱力学的平衡状態として存在することを支持するいくつかの現象を確認したが、直接それを捉えることが出来ないでいる。そこで本研究は液晶場に直接外場変形を与え、誘起される構造変化から液晶場における高分子鎖の収容形式を理解するものである。動的な変形を加えるに当たって、スメクチックCA液晶を発現する主鎖型液晶高分子が液晶場においてどの様な運動性を有しているのかを液晶ガラス状態-液晶相にわたる広い温度範囲において動的粘弾性測定を通して捉えた。異なる配向を有した試料を作製することにより、高分子鎖方向(スメクチック層に対し垂直)と高分子鎖と垂直な方向(スメクチック層に平行)におけるそれぞれの運動モードの異方性をとらえることに成功している。つづいて、液晶相の鎖状形態を解明するため液晶場に直接外場応力を与えたところ、液晶は0〜4000%という大変形をおこした。延伸下の変形挙動を力学測定、X線回折測定から観察したところ、配向挙動は延伸速度・温度に依存して全く異なり、2種類に分類されることを見いだした。いずれの場合も延伸初期(〜100%)において延伸方向に対し高分子鎖が垂直に配向する(垂直配向)という特異な配向挙動を示すが、その後の延伸では、延伸速度が遅いとき(例、5%/min)は引き続き垂直配向が持続するのに対し、延伸速度が速いとき(例、100%/min)、垂直配向から延伸方向へ高分子主鎖が配向する平行配向突然があらわれた。このとき、平行配向と垂直配向の二種のみが共存し、中間の配向は現れていない。そして4000%の延伸において垂直配向は消え、完全な平行配向へと転移した。延伸によるこの配向挙動をいままでえられた高分子性、液晶性、液晶高分子のダイナミクスに関する知見をもとに解析した。この配向挙動は液晶場における折りたたみ鎖ラメラ構造の流動、ラメラ間を結ぶtie分子のすり抜け、ラメラのunfoldingで説明できた。変形速度が分子の緩和速度より遅い場合スメクチック層内での流動により高分子鎖が層と垂直に配向するのに対し、変形速度が緩和速度より速い場合、スメクチック層内での流動では緩和できず、ラメラが流動する。このときラメラ間をつなぐtie分子のすり抜けが許されずラメラが崩壊し、高分子鎖が流動方向に並ぶ。以上の結果は液晶場の鎖状形態はラメラであることを実質的に示すものである。以上の成果を論文としてまとめ投稿した。
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Research Products
(3 results)