2002 Fiscal Year Annual Research Report
量子情報における絡み合った状態と相対性原理との整合性
Project/Area Number |
02J06432
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺嶋 容明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子情報 / 相対性理論 / EPR相関 / 絡まり合った状態 |
Research Abstract |
Einstein、Podolsky、RosenによるEPR相関は絡まり合った状態から生じる量子論に特有の非局所的な相関である。例えば、スピン-重項状態にある二つの粒子のスピンの測定では、二人の観測者の同方向の測定結果が完全に反相関するということに現れる。このような相関は量子情報の分野においては主に量子暗号や量子テレポーテーションなどの量子通信に用いられている。本研究では通信の受信者と送信者の運動がこのスピンによるEPR相関やそれを用いた量子通信にどのような影響を与えるかを相対論的量子論により考察した。 簡単のため、二人の観測者が粒子の運動に垂直な同一の方向に同一の速度で運動している状況を仮定した。相対論的量子論の枠組みにおいてスピンはLorentz変換により粒子と観測者の速度に依存する回転を受けることが知られている。そのため、二人の観測者の共通の静止系ではスピン一重項状態にスピン三重項状態が混合することを示した。このことは二人の運動する観測者が同じ方向で測定したとしても必ず反相関の結果が得られるわけではないということを意味している。もちろん、Lorentz変換はそれぞれのスピンの局所的な変換であるので非局所相関自体は存在している。二人の観測者の系で完全反相関した結果を得るためには、スピンの回転に合わせた別々の方向での測定を行う必要がある。 以上のことから、運動している系からEPR相関を量子通信の目的で利用することはできるが、その場合には粒子と観測者の速度に応じた測定方向の変更をしなければならないということを示した。もしそうしなければ観測者の運動は量子通信において信頼性の低下を引き起こす。そのため、粒子と観測者の速度という情報を双方の観測者があらかじめ知っておくことが必要になる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Terashima, M.Ueda: "Einstein-Podolsky-Rosen correlation seen from moving observers"Quantum Information and Computation. (掲載予定). (2003)
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[Publications] H.Terashima, M.Ueda: "Relativistic Einstein-Podolsky-Rosen correlation and Bell's inequality"International Journal of Quantum Information. (掲載予定). (2003)