2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子情報における絡まり合った状態と相対性原理との整合性
Project/Area Number |
02J06432
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺嶋 容明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子情報 / 相対性理論 / EPR相関 / 絡まり合った状態 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、相対性原理の数学的表現であるLorentz変換と絡まり合った状態により生じるEinstein-Podolsky-Rosen(EPR)相関の関係について考察した。特に、今年度は昨年度の特殊相対論における結果を重力場の導入により一般相対論まで拡張した。 一般相対論では重力場が曲がった時空で表されるので、大局的な回転対称性は存在しないことが知られている。そのため、スピンは局所慣性系の局所的な回転対称性によって定義される。 このような局所的な定義は粒子の運動とともにスピンが歳差運動することを導く。これは、粒子の移動に伴う局所慣性系の変化と加速度による運動量の変化がLorentz変換に対応し、そのLorentz変換がスピンを回転させるためである。このスピンの歳差運動を使って重力場中でのEPR相関を解析した。 簡単な例として、Schwarzschilldブラックホールの周りを一定の角速度で円運動する一組の粒子からEPR相関を取り出すことを考えた。EPR源からスピン一重項状態として反対方向に放出された二つの粒子は、上に述べた重力場と加速度によるスピンの歳差運動により、スピン三重項状態との重ね合わせになってしまう。そのため、二人の観測者が量子通信にEPRの完全反相関を利用しようとするならば、重力場と加速度に応じた別々の方向でスピンを測定する必要があるといえる。このような一般相対論の効果はブラックホールの地平線の近傍では特に顕著であり、そこでは強い重力場のためにスピンの歳差運動が粒子の移動速度に比べて極めて高速になる。実際、地平線上での粒子の円運動に対しては歳差運動の速度が発散することが示せる。このことは、地平線の近くにおいて観測者の位置に不確定性が生じた場合には量子通信が困難になってくるということを意味している。
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Research Products
(1 results)