2003 Fiscal Year Annual Research Report
極低温高磁場走査トンネル分光顕微鏡法による異方的超伝導体の研究
Project/Area Number |
02J06460
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松葉 健 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高温超伝導 / Bi_2Sr_2CaCu_2O_x / STM / STS / 混合状態 / 渦糸 / 渦糸電子状態 |
Research Abstract |
本年度は、極低温走査トンネル顕微鏡(LT-STM)を開発するとともに、現行のSTM装置を用いて高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_x(BSCCO)の渦糸芯を研究した。以下にその内容を記す。 1.LT-STMの開発 昨年度に引き続き、圧電素子を用いた粗動機構の開発を行った。粗動機構とはSTMを構成する基幹部品の一つである。昨年度は試作機を製作し室温下で動かしたが、本年度は、機体を改良し液体ヘリウム温度で動作させることに成功した。また、いくつかの試験を行った限り、その性能は現行装置を凌ぐことがわかった。現在は、試作機を発展させた測定用装置の設計・製作を行っている 2.現行の装置を用いたBSCCOの渦糸芯研究 走査トンネル分光法によりBSCCOの渦糸芯を測定し次の結果を得た。 (1)高磁場下における短距離秩序渦糸格子 今までBSCCOの渦糸は低温高磁場においてグラス状態にあり、乱れた格子を組むと考えられてきた。しかし、我々は、8Tという極めて高い磁場(温度:4.2K)で一部の渦糸が秩序のある格子を組むことを初めて見出した。渦糸はほぼ正方格子を組み、超伝導秩序変数対称性dx^2-y^2の節方向に並ぶ。この(短距離)秩序の長さは約100nmである。 (2)渦糸電子状態 渦糸電子状態を調べることはBSCCOの混合状態を理解する上で重要である。渦糸電子状態を調べた実験は過去に数例報告されているが、その測定結果は不純物など結晶欠陥から影響を受けているという可能性が指摘されていた。今回我々は、結晶欠陥の影響が少ないと期待できる短距離秩序の渦糸芯において状態密度を測定し、本質的な渦糸電子状態を測定することに成功した。渦糸芯には±9mevのエネルギーに準粒子の状態が現れる。また、その状態の強度は電子-ホール非対称性をもっている。この非対称性を見出したのは本研究が初めてである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ken Matsuba et al.: "Ordered Vortex Lattice and Intrinsic Vortex Core States in Bi_2Sr_2CaCu_2Q_x Studied by Scanning Tunneling Microscopy and Spectroscopy"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.72 No.9. 2153-2156 (2003)
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[Publications] 松葉 健 ほか: "高温超電導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_xにおける乱れと超伝導-STM渦糸測定を中心として-"固体物理. Vol.38 No.8. 553-560 (2003)