2002 Fiscal Year Annual Research Report
極低温高磁場走査トンネル分光顕微鏡法による異方的超伝導体の研究
Project/Area Number |
02J06460
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松葉 健 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高温超伝導 / Bi_2Sr_2CaCu_O_X / STM / STS |
Research Abstract |
本年度は、まず、研究目的の一つである極低温高磁場走査トンネル分光顕微鏡(STM)装置の製作に向け、その粗動機構を作成した。粗動機構とは、探針を試料に近づけるための機構であり、安定性の高いSTM装置を作る上で大変重要な部品である。我々は、その機構に圧電素子を用いる種類のものを採用し、製作を自作によって行った。現在では、室温下で動作することが確認できており、低温・高磁場下での動作実現を目指しテストを行っている。 この装置製作と並行して、以前より保有しているSTM装置を用い、高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_Xにおいてその物性の研究を行った。この物質は、クーパー対の軌道角運動量の対称性がdx^2-y^2であると考えられている異方的な超伝導体の一つである。研究の結果、この物質では3nmという非常に短い長さで超伝導ギャップ2Δ_pが空間変化していることがわかった。以前より、空間変化の原因としては、試料内の乱れによるという説と相分離によるという説、2つの可能性があった。我々の測定により、超伝導ギャップ2Δ_pの変化の度合は試料内の測定場所によって異なるものの、2Δ_pの平均値は測定場所によらず一定となることが見出された。この結果から、我々は空間変化の原因が試料内の乱れであると結論した。原因を特定したのは、本研究が初めてである。また、この研究から我々はBi_2Sr_2CaCu_O_Xの超伝導性を評価するには、「乱れの度合」という新しいパラメータを導入することが必要であるとも結論した。
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Research Products
(1 results)